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飛ばないけど強い先輩の姿が「分岐点」に 篠原まりあが捨てた“飛距離への欲”【大和笑莉奈の突撃ステップ・アップ便り】

<日台交流うどん県レディース 事前情報◇12日◇満濃ヒルズカントリークラブ(香川県)◇6494ヤード・パー72>全23試合が行われる今季のステップ・アップ・ツアーは、現在、秋の10連戦真っただ中。今週は香川県に場所を移し、台湾を中心に海外選手も多数出場する“交流戦”が行われる。自身も同ツアーに出場する大和笑莉奈が注目選手から聞き出した生の情報をお届け!苦悩を振り切り、自分のプレースタイルを貫くことを決めた26歳に話を聞いた。

篠原まりあのドライバースイングを連続写真で分析!

■苦戦が続いた原因を自己分析「分岐点だと思いました」。2019年には賞金ランク46位になり、同50位以内(当時)に与えられるシード権を獲得。プロ8年目のシーズンを迎える篠原まりあにとって、この秋は、再び足元を見つめ直す季節になった。“自分のプレースタイル”。そんな言葉を強く意識し、年末まで戦っていく。今シーズンについての話を大和が振ると、こんな答えが返ってくる。「不安要素は昨年よりも減ってるけど、昨年よりも成績が出てない。予選は通るけど全部30位以下。いい・悪いという感覚と成績がマッチしてないんです」。今季の主戦場となったステップにはここまで14試合に出場し、予選落ちはわずかに2度。ただ、最高順位は5月の「ツインフィールズレディーストーナメント」で記録した23位だ。ちなみに昨年を見ると「山陽新聞レディースカップ」の2位という成績もある。そして、この“もどかしい結果”を生み出したのは、多くの選手が陥っても不思議ではない葛藤が原因にあった。「飛距離が出ないからセカンドの距離が長くなって、パーオン率が下がった。こんなことを数字などを見て考えるようになったんです」。篠原はシードを獲った19年でさえ平均飛距離231.25ヤード(79位)と、ここで勝負する選手ではなかった。しかし、年々選手たちの飛距離は伸びていき、それに伴いコースも長くなっていく。「今年の序盤は特に振りにいってました」。その風潮に合わせるように、昨年から自分のスタイルを“壊し”にかかったと振り返る。「少し前は『このコースなら勝負できる』と思えるところがけっこうあったのに、今はそれが無くなりすぎてしまって。『どのコースで勝負をかけるの?…全部無理じゃん』って」。こうして、これまで7割程度の力で打っていたところから、フルショットを連発するように。その結果、飛ばしのアドバンテージを得るよりも、精度を失うという代償を支払うことになったともいう。■飛ばなくても強い選手を目指して「飛ばないくせにOBも出るようになって、致命傷だなと思いました。これは私じゃない。振ってボールがブレるから、今まではピンを狙えたところも、守りにいってグリーンセンターにしか乗らないし、チャンスも来ない。アンダーが出るのは、パターが奇跡的な入り方をする日だけ。それでも予選は通れるけど、最終日に伸ばすことができなかったんです」ここ1年ほど感じていた問題点について理路整然と話す。今季はここまで60台のラウンドがゼロ。もともと太りづらい体質ということもあり、どれだけ食べても体は変わらない。そのなかで無理に振ることだけを意識した結果、速さはあるが高さはない球が出るように。これではグリーンで止めることが以前よりも困難になる。シーズン終盤、そして冬空の下で行われるQTでは致命傷ともいえる球質だ。それを受け止め、頭のなかの整理もすでにできている。冒頭にある“分岐点”が訪れたのが、推薦で出場した先週のレギュラーツアー「スタンレーレディスホンダ」だった。「初日に(青木)瀬令奈さんが、7アンダーを出して首位に立ったんです」。青木の今季平均飛距離が222.92ヤード(95位)。足りない部分を卓越したフェアウェイウッド、そしてアプローチ、パターといった技術で補い、現在3年連続で優勝を果たしている、“飛ばないけど強い選手”の代表格と言える。その姿は衝撃だった。さらに、こんな一言も背中を押すことに。「大西コーチ(青木を指導する大西翔太氏)に会った時に、『まりあちゃんは瀬令奈さんと同じタイプの選手だし、伸ばしていくところが違うんじゃない』って言われたんです。これが分岐点だと思いました」。それに続けて青木のアプローチ、そしてパター技術の高さについての話も聞くことができた。「たった10ヤード前に飛ばすために正確性を消すなら、10ヤード後方でもピンをさせるようショットの精度を高めたいって思えたんです。私が伸ばすべきはそこだなって」。■極度のアプローチ不振も乗り越え、いざQTへ今はQTに向け、“自分がやるべきこと”に向き合い、クラブを振る毎日を過ごす。以前のように7割のスイングでも、フルスイングでもそこまで距離は変わらない、ということも改めて実感したという。やはりゴルフは不思議だ。「自分も飛ばせるようにという希望を持ったけど、瀬令奈さんはそれがなくても上位で戦えている。自分に足りないのはその部分なんです」。シードを獲った時には、ウェッジショットの精度に自信を持って戦うことができていた。パー5で2オン2パットも、3オン1パットは結果は同じバーディ。そんな当たり前ともいえる事実を、今は思い出せてもいる。去年は極度のアプローチ不振にも陥り、「他人からみたらイップス」という状態だったというが、それも乗り越えた。なんでもないライからザックリが出続けても、どれだけ気持ち悪くても、試合でウェッジを握り続けたのが克服法ということを明かす。「(アプローチ時に)ユーティリティを使うこともできたけど、それをやったら“戻れない”と思ったんです。同じ場面から58度を持って失敗をしないという事実を、自分に植えつけるまで、とにかくやり続けました」。こんな“根性娘”ともいえるエピソードが、そのまま今の課題克服の道筋にもなりそうな気もする。ここ2シーズンはステップ・アップ・ツアーで戦っているが、もちろん目指すのはかつて主戦場にしたトップカテゴリーだ。胸の内にあった思い、それを打開しようとする気持ちは、先輩プロの大和が思わず『勉強になりました』と言ってしまうほど熱い。「自分には(距離を求めるのは)合ってないなと実感しました。今はQTのために少しでも改善しようと思っています」。失敗は成功の母なんていう言葉もある。来シーズンの“レギュラー復帰”をイメージしながら、この秋、そして冬を過ごしていく。解説:大和笑莉奈(やまと・えりな)1990年2月13日生まれ、山形県出身。中学時代にはアルペンスキーで全国大会出場経験も持つ。宮里藍らを輩出してきた名門の東北高校ゴルフ部に進み腕を磨くと、2009年のプロテストに合格。13年には「エディオンレディースカップ」でステップ・アップ・ツアー優勝。レギュラーツアーでも優勝争いを経験してきた。現在はテレビでの解説なども務め、21年にはゴルフ業界活性化、女子プロゴルファーの新たな可能性追求のため、「LPGA女子プロゴルファーズ連盟」を立ち上げた。

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