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「3Wは2つの打ち方がある」 堀川未来夢が危機管理能力の高さを見せて今季初V

<日本プロゴルフ選手権 最終日◇7日◇グランフィールズカントリークラブ(静岡県)◇7219ヤード・パー71>

日本大学時代に過ごした三島の地で今季初優勝を遂げた。2位に3打差の首位から出た堀川未来夢が4バーディ・1ボギー・1ダブルボギーの「70」で回り、トータル15アンダーで3打のリードを保ったまま、逃げ切り優勝を遂げた。コースを熟知し、高い危機管理能力を発揮した4日間となった。

「グランフィールズは熟知したコースです。けっこうティショットが難しいです。僕は他の人より刻むことが多かったと思います」。今回の会場は、日大ゴルフ部時代はキャディバイトや練習でよく訪れた場所。距離は長くないがフェアウェイを外すと深いラフや木が密集した林や崖も多く、OBもある。ティショットの置き所がポイントとなる。

堀川がこの日ドライバーを握ったのは6回のみ。「ドライバーで“大丈夫かな”って打つのは結構危険。少しでも危険なにおいがするのであればレイアップしようと思っていました」。

危機管理能力の高さはそれだけではない。レイアップで使うクラブは主に3番ウッドと5番ウッドだが、この日3番ウッドを最初に打った3番パー3で、大きく右に曲げてトラブルになった。

2位から出た嘉数光倫が1番、2番連続バーディで1打差に迫られた状況。3番パー4で堀川のティショットは大きく右に曲がり隣ホールとの間の崖下まで落ちた。深いラフの中でロストボールになる可能性もあったが、ボールを発見。グリーンを狙うことはできずに一度3番ホールに戻して、残り105ヤードを1メートルに寄せてパーでしのいだ。

「自分の中でスプーンの打ち方が2つあるんですけど、ミスしてしまったので今日1日は封印しました」。堀川の中で3番ウッドは、払い打ちでドローボールが出る265〜270ヤード飛ぶ打ち方と、アイアンのようにやや打ち込んでライン出しのようにフェードで250ヤード飛ぶ打ち方の2つがある。3番ホールで使ったのは前者の打ち方だ。

「普通に打てばドローボールが打てますが、緊張した場面で一発目が打てなかったので、今日は使えないと思って消しました。もう1つの打ち方は緊張した場面でも打てるのでそっちに徹しました」。一発悪いイメージが出るとまた同じミスが出てトラブルになりかねない。その危険を回避して以前から2つのスイングを準備していたのも奏功した。

悪いイメージは特に嫌がる。15番パー4は打ち下ろしで右に池がある。2日目にドライバーで右に曲げて池に入れた。3日目からは3番ウッドで打つようにしたが、これは16番パー4のティショットのことを考えての選択でもある。

「打ち上げの16番は少し狭いですがドライバーを握りたいホール。15番でミスをすると悪い感触が残ってしまいます。16番でドライバーを握るために、15番は3番ウッドで打ちました。18ホールの流れのマネジメントもちょっと考えています。この日の16番はチップインバーディだったが優勝を決定づけるホールとして役立った。

ティショットが難しいコースだからこそ、際立った堀川の危機管理能力。4日間のフェアウェイキープ率は5位(73.214%)、パーオン率は8位(70.834%)、パーキープ率2位タイ(90.278%)の数字が物語る。前半戦、イップスに悩んだパッティングもYouTubeで共演した矢野東、丸山茂樹のお陰で封印に成功し、最後のピースがハマっての優勝だった。

YouTubeの登録者数は22万人を超える。「名前を憶えてもらうことにはよかったです。成績が出ないといろんなことを言われてしまうのは仕方ないですが…。今回はむしろYouTubeをやったことによって優勝できたと思います。いい優勝でした」。こちらは研究能力の高さを見せた。(文・小高拓)

<ゴルフ情報ALBA.Net>