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17年に現役引退の清田太一郎が1週間だけ復活 「夢のような夏休みでした」次なる目標は8年後…

<日本プロゴルフ選手権 2日目◇5日◇グランフィールズカントリークラブ (静岡県)◇7219ヤード・パー71>

「僕の夏休みが終わりました」。ジュニア時代から天才と称され、2017年にツアープロを引退した清田太一郎が、今大会の最終予選を突破して5年ぶりにレギュラーツアーに出場。2日間トータル4オーバー・84位タイで決勝進出とはならなかった。

「5年ぶりの出場なのに、いきなり中断からスタートですよ(笑)」。第1ラウンドは11時25分スタートの予定だったが、雷雲接近により8時58分から中断と晴れの舞台に水を差す。再開時間がずれ込み、2時間30分遅れでようやくスタートした。日没が迫るなかなんとか18ホールを終えて「73」の2オーバー。

家族が応援に駆けつけて予選通過を目指したこの日は、前半のアウトで2つ伸ばして「34」で回り、トータルイーブンパーの予選通過圏内でバックナインを迎えた。「10番でティショットを右に曲げてリズムが崩れてしまいましたね」。ホール難易度1位の10番でティショットを右に曲げるなど“ナイスボギー”としたが、ティショットのミスでリズムを崩して後半は「39」と4つ落として清田の“夏休み”は終わった。

5年ぶりのツアーを終えると試合の独特な空気を再確認した。「プレイベートで気持ちよくやっているときと試合のときは(ショットの)距離感が違いました。やっぱりアドレナリンが出るんですね。それに普段のラウンドではない、ミスできないという緊張感があって、筋肉が硬直してインパクトが強くはいったり、リズムもバラバラだったり。これが試合かなと」。プライベートでのゴルフとは一線を画すものを思い出した。

熊本県出身の清田は、「九州の怪童」と呼ばれ小学生の頃から有名だった。17年賞金王の宮里優作とはジュニア時代からしのぎを削り、アマチュアゴルフ界のトップに君臨。2003年にプロ転向し、ツアー優勝こそなかったもののツアーの一線で長く活躍した。股関節などの故障に苦しみ17年に現役引退を決意。家業の運送業を継いでいる。

クラブを置いてからの2年間は職務に奔走。最近は付き合いで月1〜2回ラウンドをする程度で、この5年で競技はほぼ出ていない。今大会の予選、最終予選、そして本戦に向けてラウンドや練習の回数を増やしたが、ツアーの独特な雰囲気を思い出すには時間がかかった。

現役時代との差を痛感したのは体力だった。「予選会では練習ラウンドを含めて3日連続でのラウンド。今週は月曜日から練習ラウンドしていましたから。練習はできたけどトレーニングまではできませんでしたから。かつてのトレーナーに体を見てもらったら筋肉の弾力性がなくなっていると(笑)」。もちろん現役引退しているので割り切っている部分はあるが、コースに出れば勝負師の顔を見せていただけに、悔しさもあったはずだ。

「この戦いを毎週やっていたのはスゴイですし、いまでもやっている選手はスゴイです」とかつての自分も含めてあらためてツアープロへのリスペクトの気持ちが湧いたのも確かだ。

5年ぶりに足を踏み入れたツアー会場。「みんなに会えるのは嬉しいですよね。初日は熊本時代の同級生が応援に来てくれて嬉しかったですよ」。練習ラウンドは同じ年の岩田寛と行い、夜は宮里優作を含めて「プチ55年会」(昭和55年生まれの仲間内)を楽しんだ。

“夏休み”の挑戦は2日間で終わってしまったが、「シニアツアーは出てみたいですね」。本業があるためレギュラーツアーに再挑戦するつもりはないが、苦しんだ故障個所も癒えて、8年後を見据えている。「シニアまで時間があるので、戦う気持ちのモチベーションを保つことが大切だと思います。とりあえず年に1回は目標の試合を作りたいですね」。

来年の目標はすでに定まっている。九州オープンの開催地が小学生時代から慣れ親しむ熊本空港カントリークラブで開催される。「会社からも近いですし、がんばりたいですね。優勝して日本オープンに出られたら最高です」。

飛距離や技術的な面を見ても衰えは感じさせず、かつての片りんを見せた。ひっそりとクラブを置いた天才は、ゴルフへの情熱を思い出した。「夢のような夏休みが終わりました。また明日から現実に戻ります」。家業に軸足を置くのは変わりないが、8年後を見据えて第二のゴルフ人生が始まった。

<ゴルフ情報ALBA.Net>