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「1億万点!」の価値ある勝利 平井亜実が歩んできた初優勝までの“でこぼこ道”

<カストロールレディース 最終日◇29日◇富士市原ゴルフクラブ(千葉県)◇6438ヤード・パー72)>

最終18番。トータル13アンダーで、2位に2打差をつけてトップに立っていた平井亜実は、1.5メートルのパーパットを沈めると「自然に出ました」というガッツポーズを繰り出し、大会を締めくくった。「65」を出してトップに並んだ前日は「1000万点」だった自己評価だが、この日は満面の笑みとともに「1億万点です!」という答えが返ってきた。

今年9月に26歳を迎える平井は、昨年6月にプロテストに合格したルーキーの一人。テスト合格翌年に挙げた初優勝は順調ともいえるが、ここまでの道のりは決して平たんではなかった。不合格を味わうこと4回。苦労人にも聞こえるが、「ゴルフが大好き。毎年『去年よりも確実に成長している』と思えていました。だからやめる理由がない」と、前向きに“浪人生活”を過ごしてきた。2019年にはプレーの場を求めて中国ツアーにも参戦。そこで日本人として初となる優勝もあげている。

「中国での1年間は大きいですね。そこで勝った時の経験も生かすことができました」。正確にはツアー2勝目ですね、と投げると、ニッコリと笑顔が返ってきた。とはいえ、「落ちたという事実は辛かった」というのは当然のこと。それを初受験となった15年のプロテスト会場で出会い、そこから師事する浦大輔コーチと二人三脚で乗り越えた。「何年も教わってて失敗しているなら、コーチを変えたほうがいいとも言われました。コーチの理論が正しかったということを伝えたかった」。信頼が揺らぐことは決してなかった。

プロテスト合格後の会見では、「予選落ちか、優勝するか。そんな選手になりたい」とも話していた。その言葉を聞いても分かる通り、攻撃的なゴルフが信念だ。ただコーチからは『“攻める”のと“無謀”は違う』と諭され続けてきた。その意味を理解できないまま実践し、成績につながらない。ここ1カ月間は、そのモヤモヤをコーチにぶつけ、話し合いも続けてきた。

しかし、優勝を決めた最終日は4つのバーディもさることながら、ボギーフリーも輝いている。接戦のなかガマンを続けた証し。「自分も優勝争いをしている時にこんなゴルフができるんだなって思いました(笑)」。その驚きも“1億万点”の価値につながってくる。12、13番ではシビアなパーセーブも見せた。「きょうはピンを攻め続けたわけではなかった。ガマンをしていれば、バーディチャンスが来るんだな」。勝つか負けるかという緊迫の場面で、ようやく師匠の言葉が腑に落ちた。

ウイニングパットを決めた直後。「小学校時代から仲がいい」という土田沙弥香から祝福の言葉がおくられると、これまでの日々が頭によみがえり、あふれ出るものをこらえることができなかった。「優勝まで長かったですね」。こんな言葉も自然と出てくる。

今後の目標は、来季のレギュラーツアー前半戦出場権が与えられる「ステップ賞金女王」に定めた。この優勝賞金360万円を加えて、ランクは468万円の4位に浮上。「6年もかかって合格した。私はコツコツ積み上げるタイプ」。まずはステップの頂点を目指し、ここからも“コツコツ”と進んでいくに違いない。

<ゴルフ情報ALBA.Net>