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なぜステップ・アップ・ツアーの大会を続けるのか? ビーピー・カストロールの小石会長に聞いてみた

2010年から国内女子の下部ツアー、ステップ・アップ・ツアーの試合でスポンサーをしてきたBPカストロール株式会社。いまではもっとも歴史ある大会のひとつとして、ツアーを盛り上げてきた。下部ツアーの1試合ではあるものの、この大会にはいろんな思いが詰まっている。これまで続けてきた経緯や、女子ゴルフ界への思いをビーピー・カストロール株式会社の小石孝之会長に聞いてみた。

■「こんなに長くやるとは思っていなかった」

カストロールレディースが始まったのは2010年。今となっては、もっとも古参大会として親しまれている。カストロールは、試合に特別協賛するだけでなく、多くの選手のサポートもしてきた。その理由を小石会長はこのように語る。

「ある大会のプロアマ戦で佐藤靖子選手と知り合ったんです。その頃はまだ女子ゴルフ人気もここまで高くなかった。見てみると、レギュラーツアーの試合数に対して、ステップは大幅に少ない。費用もそれほどかからない。それなら試合をやってみようと思ったんです」

調べてみると、当時レギュラーツアーの試合のメインスポンサーになると2億から2億5000万円かかる。「企業にとって、当時はゴルフ大会へのスポンサードは広告媒体として考えていなかったんです。それはテレビや新聞でいいと。だから、広告という形ではなく、少ない額でも、選手を応援したいという思いから始めたんです」。

ステップの試合も減っていく中、JLPGAの会員は増えていく。その試合の場を提供したいと立ち上がった。そして、今年もその季節がやってきた。「こんなに長くやるとは思っていなかった」と当時を振り返る小石会長。今となっては、女子ツアーで有名人となったサポート役。今後についても、様々な意見を持っている。

■プロテスト改革などにも考えがおよぶ

3年前、JLPGAはプロテストに合格した正会員しか試合出場のための予選会に出られないという規定を設けた。これにより、いままで予選会(QT)を受けてツアーに出場していた非会員の選手は、プロテスト合格が必須条件となってしまった。

「いろんな考えがあると思うんです。実力のある選手はたくさんいますが、年1回のプロテストでたまたま調子が悪かった、ケガをしていたなどの理由でプロになれなかった選手は、試合に出られない状況で1年間待たないといいけないんです。それはかわいそうな面もあります。例えばですが、プロテストを年間2回行って、それぞれ10人が受かるというようなことも出来るかもしれません」

小石会長は、JLPGAの細かな規定にも精通。プロだけでなく、プロになる前の選手のことも真剣に考えている。

正会員ではないものの、QTの資格でツアーに出場できた選手を単年登録選手と呼んでいたが、今は廃止。カストロールとしてもそのような単年登録選手をサポートしてきた経緯もある。現在は20人近くの選手をサポートする同社だが、今後はどうなっていくのか。

「特に人数を増やそうとか、そういうことは考えていません。知り合いになって、いい選手だなと思ったら応援したいと思う。少額でもいいからサポートをしたいと思えたらサポートする。人数が増える増えないを気にしたことはありません」。小石会長自身が選手と接した結果、どんどん人数が増えて行った経緯はあるが、それは人間と人間の付き合いから発展したものだという。

■ツアー選手権の実現 アマチュア選手出場への思い

小石会長がJLPGAに一度伺いを立てたことがある。最終戦の実施、つまりツアーのクライマックスを盛り上げるということ。「レギュラーツアーは宮崎で最終戦のチャンピオンシップがありますがステップにはないんです。1年間頑張った選手が集まって、次のシーズンにつながるためのチャンピオンシップをやってみたいと思ったんです」と構想は出来ていた。

「1社だけでなく、ステップの各スポンサーが集まって、お金を出し合ってやってみたら面白くないですか?選手のモチベーションにもなるし、とても面白いと思うんです。でも実現はしませんでした。最後は、うち1社でやってもいいよと言ったんですけど(笑)」

それほど、選手の戦いの場をつくる、モチベーションを上げる、ひいては選手の稼ぎの場を増やしていくことを考えている。

それに関連して、気になることもある。カストロールレディースはこれまで、アマチュア選手を出場させていない。これには小石会長の考えが反映されている。

「プロゴルフトーナメントと名前がついている以上、プロの大会だと思うんです。日本女子オープンなどはアマチュアも出られる。他の大会でもアマチュアを出場させるところもあります。それはそれでいいと思うのですが、うちはそうはしない。何百人というプロがいるわけです。どこでお金を稼ぐかといったら、トーナメントなんです。賞金を稼ぐトーナメント、そこは変えていきたくないんです」

あくまでも選手のために試合をしていくというのがカストロール、そして小石会長のスタンス。この一貫した考えがブレないからこそ、選手もこの大会を楽しみにしている。

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大会の名物のひとつに小石会長のスタートアナウンスがある。選手一人ひとりのプロフィールを読み、直近の成績を調べ、性格、趣味なども頭に入れ、原稿をつくる。そして、朝、1番ティから出て行く選手を低く渋みのある声で送り出していく。

「テントの中は50度くらいありますよ(笑)」と、真夏ならではの苦労もあるという。コロナ、東京五輪の影響で20年は11月、21年は9月開催と、例年の酷暑の中では行われなかったが、今年は定位置の真夏に戻ってくる。

「カストロールレディースの売りは灼熱の戦いです。緑が映えて、キレイな季節。ボクは夏が好きなんです。暑いときの開催で、大会も熱く盛り上がってくれればいいなと思っています」

真夏の千葉の太陽のしたに3年ぶりに戻ってくる灼熱大会。今年もカストロールを慕うプロによる熱い戦いが展開される。

<ゴルフ情報ALBA.Net>