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C・キムは15キロ、大槻智春は10キロ ダイエットで『18ホール戦い続けられる活力』を得る【ゴルフと健康】

今、男子プロゴルフ界ではダイエット気運が高まっている。契機となったのが昨シーズン、共にダイエットで体を絞ったチャン・キム(米国)が賞金王に、大槻智春がメルセデスランキング1位を獲得したことで、ぽっちゃり系の男子プロが今、密かにダイエットに取り組んでいる。

同時期にダイエットをして成果を挙げた二人だが、その取り組み方は違っていた。

大槻の場合は、米やパンなどの主食を控え、その分、たんぱく質を多めに摂取する、いわゆる『糖質制限ダイエット』だ。これを習慣づけた結果、2021年の一年間で10キロちょっと減量した。

「コロナ禍の時期だったこともあって、ツアー中に外食にあまり行けなかったので、コンビニのサラダチキンとかを選んで食べていたので、それも良かったんです。量的なことで言えば、朝、昼までにしっかり食べておけば充分で、夜は寝るだけなので、晩ご飯はお腹一杯に食べなくても大丈夫ですね」(大槻)

一方、チャン・キムがやったのは食べる物には制限を掛けずに、食べて良い時間帯を決めてそれ以外の時間は食べない『インターミッテント・ファスティング』(断続的断食)というダイエット法だ。チャン・キムは、食事の摂取時間は午後1時から午後7時の6時間だけ。それ以外の時間は固形物は口にせず、水とコーヒーと紅茶しか飲まなかったという。

「(2021年の)全米オープンの後に、溜まった疲れがなかなか取れず、コンディションも良くない状態に陥ってしまった。体重が増え過ぎるとケガが増えたり疲れが溜まりやすくなる。プロゴルファーは毎週プレーをするので、しっかりコンディションを整えて健康に過ごせるようにすることが大事だと思ってダイエットをすることにした」(チャン・キム)

実際、ファスティングによって最初の1カ月半で体重は約4キロ減った。しかし、その後に食事の摂取を通常の時間帯に戻した結果、「ついつい食べ過ぎてしまうことが多くなった」。その後、また時間帯制限のファスティングを続けた。そして、2021年のシーズン開幕時には112キロだった体重が終盤には97キロとなり、半年間で15キロの減量に成功した。

「(減量によって)特にスイングが変わったイメージはない。でも、それをやっていると目覚めも体の調子も良くて、活力を一日保つことができていると感じられる」(チャン・キム)

チャン・キムの最後の、『活力を保つことができると感じられる』との言葉はダイエットの効用を語るうえでとても重要だ。現在では、ダイエットは単なる減量に留まらず、体に活力を与え、そしてアンチエイジングに影響をすることが分かっているのだ。

カロリー制限と健康長寿の関連性を調べる研究として良く知られるのが、米国のウィスコンシン大学の実験報告である。アカゲザルを二つの集団に分け、一方には制限をせずに餌を与え、もう一方にはカロリーを30%減らした餌を与え続けた。20年後に、好き放題に餌を食べたサルの半分(5割)は死んでしまったが、カロリー制限をした餌を食べたサルたちは8割が生きていたのである。

さらに論文では、餌を食い放題のサルは毛艶が衰えていかにも老いた姿になっていたのに対し、カロリー制限をしたサルたちは20年経っても毛はふさふさで艶も良くて見かけが若々しく、俊敏に動き回っていたのだという。30%のカロリーオフの食事を続けてきたサルたちは、まさに、チャン・キムが言うところの『活力を一日保つことができていると感じられる』という状態を、20年後も保っていたわけである。

ブライソン・デシャンボー(米国)が2020年に体重を10キロ増量して、ツアー競技で驚異の370ヤードのビッグドライブを披露して周囲を驚かせたのは、もはや過去の話となりつつある。今は、減量による『18ホール戦い続けられる活力』のゲットがこれからの流れになるかもしれない。(取材・文/古屋雅章)

<ゴルフ情報ALBA.Net>