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Vol.5 進化するショットリンク 〜後編〜

アメリカ最新ツアー事情をお届けする「ワールドツアーニュース」を配信!
現地でツアーを支えるカメラマンとしてご活躍中の田邉安啓(たなべやすひろ)さんが現地から旬な話題を届けてくれました!

 前編ではショットリンクの歴史と基本機能を振り返った。ここからは最近取材して分かったショットリンクの大幅な進化と、今後の未来に目を向ける。
 テレビ観戦では気づかないのだが、米男子ツアーを現場で取材していると、各ホールのグリーン付近に設置されているスクリーン表示が気になった。スクリーンにはスコア(リーダーボード)のほか、各選手の顔写真やその日の個別スコア、簡単なプロフィールなども表示される。もちろん、天候に関する注意情報や企業のPR広告もある。気になったのは、画面が入れ替わるタイミングだ。

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 今年の「3Mオープン」で松山英樹はスコッティー・シェフラーと同組でプレーした状況を例に挙げよう。あるホールのスクリーンには、バーディーパットを打ったシェフラーの情報が表示されていた。シェフラーはバーディーパットを外し、次は松山が打つ番となった。松山がバーディーパットのアドレスに入ると、スクリーンの画面は松山が打つことを把握したかのうように、松山の画面表示に変わった。
 スクリーンの近くやグリーンの脇にボランティがいて、これから打つ選手の情報をスクリーンに表示するようにスイッチングしているのかな?と予想したが、スイッチングを担当しているようなボランティは見当たらない。でも、スクリーンはまさにこれから打とうとしている松山とタイミングを合わせるように表示を変える。誰がこのスイッチングを担当しているのだろうか?

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 近年では1組に一人のスコア管理ボランティアが組に付いて歩いている。スコア管理ボランティアは携帯サイズのスコア入力デバイスを持っているのだが、このディバスのシステムが進化しているのだ。
 少し前までのシステムでは、スコア管理ボランティアが各ホールを終了するたびに各選手のスコアを打ち込み、そのデータが本部に送信されると全体の順位に反映されるというものだった。もう少し前は、紙の上にスコアを記録すると同時に、トランシーバーなどを通じて、口頭で本部にスコアを伝えていた時代もあったが、現在はそれが通信ディバイスによって行われるようになっている。ただ、このデータの打ち込みが興味深い。パッティング(グリーン付近)の場合を一例として紹介しよう。
1. 打順が回ってきた選手の選手の名前をタッチして、打つ選手を指定する
2. 打とうとしている場所を特定する(グリーン上、カラー、グリーン手前ラフ、バンカーなど)
3. 打つ選手がアドレスに入ったら、選手の名前の下にあるボタンを押し続ける
4. パット(ショット)をした瞬間にボタンから指を離す
5. パットの場合、カップインの成否を確認して、画面上の「入った」「外した」の結果をタッチして入力する
 この作業をすることにより、情報がスクリーンと連動しているので、グリーン横のスクリーンには、まさにこれから打とうとする選手の情報がリアルタイムで表示されるのは、このシステムが担っているためなのだ。

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 現在、米男子ツアーのコースはデジタルで管理されていると言っても過言ではない。グリーン付近には最低3台のカメラがグリーン付近全体を監視できるように設置されている。このカメラはボールを捕らえるモーションディテクターで、ボールだけを捕らえるようにプログラムされている。このカメラにとらえられたボールは、スコア管理ボランティアの持つディバスと連動していて、どの選手が打ったのかが分かるようになっている。また、カメラはフェアウェイにも設置されており、ティーイングエリアからグリーンまでホール全体を捉えている。以前まではグリーン上のボールの動きしか捉えていなかったのだが、いつも間にかホール全体をカメラが捉えるまでに進化していたのだ。
 ここで一つ思い返していただきたい。ひとつ前の世代のショットリンクでは、ボランティアが止まったボールにレーザーを当てて特定し位置情報を取っていたが、今はも=ションディテクターカメラがコース内に設置されるようになり、ほぼ無人化されている。ボランティアによって間違ったデータが送られたり、カメラがボールの位置を把握できないぐらい曲がったとしても、その時点で人の確認作業が入り、データは修正される。このため、ショットリンクに誤った情報が残ることは極めて稀である。

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 ショットリンクの現場責任者であるショーン・ハウランド氏に話を聞いた。
「現在はシステムの進化により、無人化が達成できています。以前にはこのショットリンクのトラック内にはテレビ局のスイッチングルームのように数多くの画面があり、人が何人かいてデータを確認していたりしてましたが、今はそれもなくなって、現在は全てのデータがPGAツアーの本部があるフロリダ州ポンテベドラビーチに送られ、スインチングルームのような部屋もフロリダにあって一元管理されています」
 そう言えば、野球やサッカーのビデオ判定システムも、ビデオ判定委員は現場のスタジアムではなく、通信により全く別の街にある本拠地の本部内で行われているようだが、そのシステムに類似している。
「現場の作業はなくなることはありませんが、それでも少人数化、無人化ができています。しかし、これは時代の要請でもあるのです」
 これはどういうことなのか?米ツアーのボランティアと言えばかなりの人気で順番待ちもあると聞いていたが、近年は様子が異なっているという。ハウランド氏が続ける。
「ボランティア人気が高かった試合も、実は近年ではボランティア不足に悩んでいます。『1組に3人のボランティアさんを全組に欲しい』と要請しても、昔はすぐに集まってくれましたが、最近ではほぼ無理。『PGAツアーはボランティアの募集人数を減らしている』という指摘もあるのですが、実は逆で、十分にボランティアさんがいないので、デジタル技術による省力化を進めざる得ないというのが実態でなんです」
 時代を先取りした技術が発展し、時代の変化の波をも乗り越える。PGAツアーのショットリンクはこれからどんな大波を乗り越えていくのか、楽しみである。

田邉安啓(たなべやすひろ) | カメラマン&ライター

1990年代からアメリカでゴルフの取材を始め、現在も年間で約30試合の現場に足を運ぶ。 本業はフォトグラファーであり、共同通信の依頼で米ツアーを撮影する傍ら、日本の専門媒体へ記事と写真を提供。 通称“JJタナベ”として親しまれ、選手インタビューから用具、コース運営まで取材対象はゴルフ業界全般に渡る。