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Vol.4 進化するショットリンク 〜前編〜

アメリカ最新ツアー事情をお届けする「ワールドツアーニュース」を配信!
現地でツアーを支えるカメラマンとしてご活躍中の田邉安啓(たなべやすひろ)さんが現地から旬な話題を届けてくれました!

 PGAツアーが運営している「ショットリンク(SHOTLINK)」をご存知だろうか。2001年に初めて試合会場に導入されたシステムで、かなり単純化して言ってしまえば、選手の打ったボールの位置をコンピューター上に示すシステムだ。これとリーダーボードをリンクさせて表示するようになったのが初期段階のシステムだった。
 野球やバスケットボールのように、スタジアムやコートといった(ゴルフと比べて)比較的限られた場所のみでプレーする競技とは異なり、ゴルフはゴルフコースというかなり広大な場所で移動しながら行うスポーツだ。したがって、観客も椅子に腰掛けて観戦することもできるが、一か所から見ていたのでは試合の全容を見ることはできない(*もちろん、定点観測するという観戦の楽しみ方もある)。野球ならば、バックネット裏からであろうが外野席からであろうが、投球やバッティング、走塁、守備といったプレーの全てが球場内の観客席からなら見ることができる。スコアボードも、巨大なバックスクリーンと内野席の上部など数カ所にあるが、数としては限られている。

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 しかし、ゴルフとなるとそうはいかない。お目当ての選手の組について歩くと、1ラウンドで10キロメートル以上も歩くことになる。どこかで待っていれば次の組がやってきて、目の前でショットを披露してくれるが、その組もすぐに次のホールへと移動してしまう。組についているスコア係がいれば、その選手のスコアはわかるが、今度はその選手が何位にいるのかがわからない。このような点だけを挙げても、スタジアムで行うアリーナスポーツとゴルフでは観戦スタイルが全く異なる。ゴルフをされる方ならばこれは常識かと思われるが、これはゴルフ観戦における大きなハードルでもあった。
 そこで開発されたのがショットリンクだ。

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 2000年代、初期段階のシステムはこうだった。ティーショットの落とし場所となる付近のロープ際にレーザーのディバイスが設置され、ボランティアが選手の打ったボールに照準を合わせて計測する。この計測データが選手の名前と合わせて記録される。ボールの止まった場所がフェアウェイなのかラフなのか、バンカーなのかもこれでわかることになる。グリーンに乗ったボールも基本的には同様だ。グリーン後方に設置された台の上から、ボランティアがボールにレーザーを当てて場所を計測し、記録する。だたし、グリーンの場合は少し状況が複雑になる。グリーン面にボールがあっても、選手、キャディー、TVクルーなどが歩くため、人がボールを隠してしまって計測が難しいケースがある。その場合には、グリーン面を細かなマス目に区切ったマップを持ったボランティアがボールの大まかな位置を記録する。バンカーや砲台グリーンをこぼれたボールの位置も正確にレーザーを当てることが難しい場合があるのだ。深いバンカーで選手の頭が見えれば、そこが大まかなボール位置として把握できるが、見えない場合だってある。全てが機械で計測できるわけではないのだ。

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 初期システムの計測方法は、一旦ここで話を留めておくが、後編の基本知識となるので、頭の片隅に入れておいてほしい。そしてここからは、ショットリンクで集められたデータが、ゴルフ観戦や統計収集においていかに有効なのかを話す。
 我々のように報道関係者からすると、一人の選手にずっとついて歩けば、その選手のその日のプレーは把握できる。しかし、現在の米女子ツアーのように日本人選手が15名ともなると、一人の選手だけについて歩いていては取材にならない。不調だった選手が急に優勝争いに躍り出たり、全くの新人選手が好プレーをしたりすれば、その選手のプレーぶりを伝える必要がある。しかし、大勢の選手が出場している場合にはなかなか手が回らない。しかし、ショットリンクがあれば、バーティーパットを打った状況やトラブルの種類(池ポチャ、アンプレ、OBなど)もある程度は把握できる。これだけでも、取材する上では非常に有用だ。

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 また、ティーショットの飛距離やバンカーセーブ率など、年間を通じての統計データも管理しやすい。近年では、パット貢献率、ドライバーやアイアンなどの各ショットの貢献率というものもある。また、「フェアウェイを外した際の左右の偏向値(例:左ラフに外す場合が35%、など)」「グリーンを外した際の、ピンから15〜30ヤードの距離から打った時の寄せた平均距離(*チップインなら0ヤード)」というかなりマニアックなデータまでショットリンクなら出せるのだ。

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 ショットリンクが導入されて10年ぐらいした頃、タイガー・ウッズがメディアからある質問を受けた。質問内容は「今日はフェアウェイキープ率が芳しくなかったが、どうなのか?」という内容だった。ショットリンクが定着し、さまざまなデータが即座に手に入るようになったことで、記者としてもデータを元にした質問をしたのだった。その際のタイガーの答えはこうだった。
「ショットの精度が悪かったわけではない。ショットはむしろ良かった。地面が乾いていて硬く、ボールが思ったより転がってしまった。フェアウェイを少し外しただけのファーストカット(カラー)にボールが止まったことが何度かあったが、ショットは悪くなかった。でも数字上はフェアウェイを外したことになる。だから、数字よりも実際のショットは良かった」

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 話が本筋から少し逸れてしまったので、ショットリンクの有用性に話を戻したい。ショットリンクはライブスコアのシステムと接続され、PGAツアーであればPGATOUR.comで見ることができる。選手のスコアは瞬時にアップデートされる。ボールの位置もコースのマップ上に示された点と線で即座に表示されるので、選手の居場所を知るにも便利だ。そして、このショットリンクシステムは、全米オープンなどを開催するUSGAや米女子ツアーのLPGAにも、まだ限られた試合数ではあるものの提供されるようになっている。ちなみに、マスターズではショットリンクの情報とともに、各選手のショットを映像で確認できるので、選手のリアクションまで確認できてしまうのだ。

 後編では、さらに進化した現在のショットリンクと、そこから見えてくる課題に話を広げようと思う。

田邉安啓(たなべやすひろ) | カメラマン&ライター

1990年代からアメリカでゴルフの取材を始め、現在も年間で約30試合の現場に足を運ぶ。 本業はフォトグラファーであり、共同通信の依頼で米ツアーを撮影する傍ら、日本の専門媒体へ記事と写真を提供。 通称“JJタナベ”として親しまれ、選手インタビューから用具、コース運営まで取材対象はゴルフ業界全般に渡る。