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vol.2 最新テクノロジーの有効性

アメリカ最新ツアー事情をお届けする「ワールドツアーニュース」を配信!
現地でツアーを支えるカメラマンとしてご活躍中の田邉安啓(たなべやすひろ)さんが現地から旬な話題を届けてくれました!

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 「トラックマン」というデバイスをご存知だろうか。今では多くのツアープロが愛用する弾道計測器のことだ。ノートパソコンより一回り大きく、打席の後方に設置してボールを打てば、打球の弾道(軌跡)、飛距離にとどまらず、ボールの初速、打ち出し角、スピン量をはじめ、クラブヘッドの軌道、スイングスピード、スイングプレーンの角度など、ショットに関するありとあらゆるデータを表示してくれる。インパクトゾーン付近のヘッドやボールの挙動は動きが速いため人間の目では正確に確認しずらいが、このデバイスはそれを検知・解析し数値化して表示してくれる優れものだ。

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 実は、PGAツアーにトラックマンが登場して今年が20周年にあたる。今では「GCクアッド」や「フライトスコープ」などの競合他社製品も数多く登場しており、持ち運びができるポータブルタイプが一般的。20年前、トラックマンがトーナメント会場に登場したときは、試合を中継するテレビ局が主導していくつかのティーイングエリアにトラックマンを設置した。ティーイングエリアの後方2か所、前方1ヶ所の3ヶ所にワンセットとして設置し、3台が一体のセンサーとして稼働して打球を計測していた。現在では1台でその役割を果たせるように進化したが、当時は画期的なデバイスだった。
 20年が経過し、現在ではツアーで戦う選手の必需品にもなっており、多くの選手が練習場で使用してスイングをチェックしたり、練習日にはコースに持ち込み、ショットやスイングを確認している。ちなみに、松山英樹はトラックマンとGCクアッドを併用している。

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  ここれほどまでツアープロに必要とされるようになった理由は、その有効性の高さに他ならない。スピン量などは元々肉眼でわかるものではないし、ヘッドの軌道も正確には判別し難い。むかしの話ではあるが、あるエピソードを思い出した。
 今のようにポータブルな弾道計測器が世の中になかった時代、米ツアーの選手は定期的に大手メーカーのテストセンターと呼ばれる場所に行ってスイング解析をしてもらっていた。テストセンターには、スタジオのような場所に備え付けの弾道計測装置があり、そこでボールを打ってスイングデータを確認していた。当時、チャールズ・ハウエルという選手から聞いた話がある。

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 いつも打っていたドライバーショットについて、
「自分のスイングは、インパクトエリアでのヘッドはややアッパーる軌道に動いていると思っていた。より高い弾道を求めていたが、これ以上アッパーめには打てないと感じていた。ところが、テストセンターの計測器に表示されたデータでは、実際にはややダウン軌道でインパクトしていことがわかり、スイングを大きく見直すきっかけになった」
とハウエルは話してくれた。今では弾道計測器を使えばいつでもスイングを計測できるようになっていることを考えると、トラックマンのような弾道計測器の役割がプロにとっていかに有益なことかがお分かりいただけると思う。ちなみにトラックマンなどプロ用の弾道計測器(ポータブル版)の価格は一台数百万円とも言われる。しかし、数億円単位の賞金を争う米ツアーのプロにとっては、十分リターンに見合う投資となりうるのだ。
 一方で、今日これほどまでに必要とされている弾道計測器だが、ここでもう一つ重要なエピソードを紹介しなければならない。弾道測定器が示す数値は、使用する選手、コーチ、ツアーレップなどの専門知識によって正しく分析されて初めてその有効性が発揮される。
 住友ゴム工業(ダンロップ・スリクソン)のツアーレップ、宮野敏一氏に試合会場で話をした。「トラックマンなどが表示する数値は本当に正確なのか?」という筆者の質問に、宮野氏は「正確で信頼に足るものです」とした上で、今年、米女子ツアーの会場であったトラックマンに関する新たな発見を教えてくれた。

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 「(同じスリクソンの用具を使用する)山下選手の調整を練習日に行っていたところ、山下選手から『もう少しスピン量がほしい。ボールを止めたい』との要望を受けました。そこで、スイングもギアも変更することなくスピン量を上げる一つの解決策として、使用ボールをスリクソンZ-STAR XVから、スピン系のZ-STAR ♢DIAMONDに変えてみては?と提案しました。練習場でトラックマンを使用して計測するとスピン量が300回転ほど増えていましたし、飛距離も変わらない。これなら行けそうだということで、練習ラウンドに出ました。ところが、数ホールプレーに付いて見ていると、実際にグリーンにあるボールが思ったほど止まっていないのでは?と感じはじめました」

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 変更要素を最小限に留める調整を行い、練習場で試打してプレーへの影響も最小限であることを数値として確認できた。ところが、コースでの実際のショットは予想に反した結果が出る。これは弾道計測器の間違い?他に原因があるのでは?と様々な疑問が頭をよぎりはじめた。そこで宮野氏は、ボールを打つ山下の近くではなく、実際にボールが落ちるグリーンへ先回りしてボールの落下時の挙動を確認した。すると、意外な現象を発見した。
「XVの弾道は、スピン量が比較的少なめなので、弾道はインパクト直後からポーンと高く上がって落ちてくる線を描きます。反対にスピン系のボール(DIAMOND)は、インパクト直後は低くめに飛び出し、そこからグンと上がった後に落下します。ところが、山下選手の弾道は男子選手が打った場合より最高到達地点がやや低く、上がり切らないうちに落ちてくるような弾道になっていたので、落下角度が浅くなっていたんです。このため、スピンの効いたファーストバウンドはスピンにより止まろうとするのですが、落下角度が浅いためにセカンドバンド以降は少し前に転がってしまう。逆に、XVはポーンと高く上がった位置からいわば直角に落ちてくるので、落下角度で止まっていた(*宮野氏のメモ書きを参照)。トラックマンは正しい数値を表示していましたが、落下地点の挙動までは計測できていなかったんです。これは新しい発見でした」

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 この結果を宮野氏が山下に伝えると、山下は「スピンは自分の体調やスイングが理由なのかも。。」と話し、最終的にはボールを変えずにXVを使い続ける選択をしたそうだ。弾道計測器の数値をそのまま鵜呑みにし、分析・検証せずにボールを変えていたら、山下は試合中に困惑する事態に陥っていたかもしれない。最新テクノロジーの値だけを盲信せず、長年の経験と現場の目と足で確認したからこそ、正しい判断を下せた好例だろう。

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 最新テクノロジーはゴルファーにも様々な恩恵を与えてくれる。しかし同時に、深い知識と結果の確認作業を行わなけば、思わぬ落とし穴がある事も道具選びの際には注意したい。

田邉安啓(たなべやすひろ) | カメラマン&ライター

1990年代からアメリカでゴルフの取材を始め、現在も年間で約30試合の現場に足を運ぶ。 本業はフォトグラファーであり、共同通信の依頼で米ツアーを撮影する傍ら、日本の専門媒体へ記事と写真を提供。 通称“JJタナベ”として親しまれ、選手インタビューから用具、コース運営まで取材対象はゴルフ業界全般に渡る。