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[001] スピンをかけないショットが最難度のショット?

アメリカ最新ツアー事情をお届けする「ワールドツアーニュース」を配信!
現地でツアーを支えるカメラマンとしてご活躍中の田邉安啓(たなべやすひろ)さんが現地から旬な話題を届けてくれました!

 2月のLPGA開幕戦「ヒルトン・グランドバケーションズ」は、今年もフロリダ州オーランドのレイクノナGCで開催された。畑岡奈紗はレイクノナの近くに居を構えており、自宅から試合に参戦。試合の最中、レイクノナGCの近所に拠点を持つ小平智が試合観戦に来ていた。アパレルブランド「アドミラル」が畑岡、小平とスポンサー契約していることもあり、その縁もあってオフに練習ラウンドを一緒に行ったりするなど二人は親交が深い。

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 筆者は、小平がPGAツアーに出ていた際に何度も取材をしたことがあったので、面識があった。とはいえ、プロの試合を取材中、同時にその試合を観戦に来場したプロにロープの外で話ができるのは稀なことだったが、せっかくの機会をありがたく活用させてもらった。もちろん話題はゴルフの話だ。ライブで解説を聞かせてもらっているような贅沢な体験をさせていただいたので、この時の会話をこの場で一部共有させていただきたい。

 近年、LPGAの試合会場のコースコンディションは改善の一途を辿っていると言っても過言ではない。硬くて速いグリーン、綺麗に整備された絨毯のような芝。そして、戦略性と難易度の高いコース。3月の「アラムコ選手権」の舞台となったシャドークリークGCは屈指の難易度を誇るし、今年の全米女子オープンの舞台は男子ツアーの「ジェネシス招待」を開催しているロサンゼルスの名門リビエラCCだ。そして、レイクノナGCのコースコンディションも常にトップレベルにある。

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 硬く締まったグリーンは速い上に、ポテトチップスのようにグリーン面はうねっていて、落とし場所を間違えるとファーストパットがグリーンからこぼれ落ちることもしばしば。今年は寒気と強風に見舞われ、さらにコースコンディションは厳しさを増した。そんな状態での試合中に、小平と話ができた。
 こちらが小平に投げかけた質問の一つに、スピンコントロールがあった。最近のボールは飛ぶのにスピンがかかりやすいという特性がある。女子プロがロングアイアンで打ってもスピンの効いた“止まる”ショットを打つこともできるようになった。しかし一方で、ショートアイアンではバックスピンがかかりすぎて、勢い余ってグリーンから花道にこぼれ落ちてしまう場面も何度か目撃した。
 100ヤード前後の距離からは、プロならばウェッジでピンをデッドに狙える。しかし、フルスイングできる距離だったとしても、バックスピンがかかりすぎると戻りすぎてしまう。サンドウェッジでちょうどの距離なのに、バックスピンはかけたくない。こんな時、プロならどうする?と小平に質問した。すると、小平は次のように答えてくれた。
「一般的には、一番手大きなクラブを持ち、軽く振って距離のコントロールをします。SWの距離でPWを持ち、スリークオータースイングをすれば、SWの距離に合わせられます。こうすれば同時にスピンも抑えられます」
 これならアマチュアにもできそうだ。しかし、この時小平はもう一つの打ち方を教えてくれた。

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 「同じ番手であってもややハンドファーストに構えてフルスイングします。こう構えることでロフトが立つので、一番手大きなクラブを持った時の距離が出ます。でも、ここで気をつけなければいけないのはヘッドの入射角。ハンドファーストに構えるのでスティーブ(鋭角=地面に打ち込むように打つ)にヘッドが入ります。これだとスピンがかかりすぎてしまうので、スピンをかけたくないのであれば、ハンドファーストに構えてスイングしたとしても、インパクトエリアはスウィープ(払い打ち=地面と平行にヘッドを動かしてインパクトする)に振るんです。こうすればスピンは抑えられるんですよ」

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 言うは易し、である。ショートアイアンを握ってハンドファーストに構え、ロフトを立てて振っているのに、インパクトエリアだけは地面に打ち込まず、ターフを薄く取るように払い打つ??よくよく考えれば物理法則にも反するようなスイングだ。
「はい、確かに実際に試合で打とうとすればすごく難しいです。でも時と場合によってはそうやって打つこともあるんです。そして、そんなスピンコンロールがすごくうまいなと思うのが、女子ならネリー・コルダ、男子ならスコッティー・シェフラーです」
 アマチュアなら、スイートスポットでヒットして、ボールがグリーンを捉えれば満足できるが、プロはそれだけでは戦えない。ショートアイアンでもあえてスピンを抑えたり、逆にしっかりとスピンをかけて止めたりというスピンコントロールを自在に操れなければ、戦えないのだ。そして、それができる選手しか生き残れない世界なのだ。

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 開幕戦、優勝したのはネリー・コルダだった。そして、コルダは女子のメジャー第1戦「シェブロン選手権」も制した。優勝トロフィーの撮影をしながら、何度も小平の言葉が脳裏に蘇ってきた。

田邉安啓(たなべやすひろ) | カメラマン&ライター

1990年代からアメリカでゴルフの取材を始め、現在も年間で約30試合の現場に足を運ぶ。 本業はフォトグラファーであり、共同通信の依頼で米ツアーを撮影する傍ら、日本の専門媒体へ記事と写真を提供。 通称“JJタナベ”として親しまれ、選手インタビューから用具、コース運営まで取材対象はゴルフ業界全般に渡る。