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練習グリーンに居残り 吉田優利から伝わる勝利への渇望【大西翔太の大展望】

ナショナルオープンも終わり、国内女子ツアーは富士のふもとへ。今週は1980年に始まった「スタンレーレディスホンダ」が行われる。今年から特別協賛に本田技研工業株式会社が加わり、よりグレードアップした戦いを制するのは誰なのか。青木瀬令奈のキャディ兼コーチを務める大西翔太氏が展望を語る。

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■例年通り“総合力”が求められます

舞台となる東名カントリークラブといえば、ツアーでも屈指のアップダウンが特徴。優勝への条件として「ある程度の横幅に抑えられることはもちろん、縦の距離が求められます。それも打ち上げ、打ち下ろしと様々なバリエーションのなかでピンをデッドに狙えることが必須です」。歴代優勝者には渋野日向子、稲見萌寧、有村智恵といったショットメーカーがズラリと並ぶ。

さらに例年この時期から一気に冷え込み、台風、秋の長雨といった悪天候のなかでの戦いとなることも多い。「プロアマが行われたきょうも10度前半ほどの気温。止まっていると指がかじかむくらいの寒さでした。一方、グリーンは柔らかくて重い。さらにフェアウェイも重くてランはほぼでない。キャリーで飛ばせることも大事。寒さ、雨の中でいかにいいショットを打てるかがカギとなると思います」と“総合的”なショット力が勝負を分けそうだ。

■練習グリーンで見えた吉田優利の勝利への執念

そんな戦いで大西氏が優勝候補の筆頭として挙げたのは吉田優利。確かにトータルドライビングで10位などショット力もツアーでは上位だが、どちらかと言えばショートゲームが巧みな選手だ。では、なぜ吉田かと言えば、勝利への思いが見えたからだという。

「ここ数試合ずっと上位で戦っていて調子がいいことは間違いない。でも、勝てそうで勝てない試合が続いています。その理由の1つが勝負どころのパッティングだと思っています。元々パターの芯に当てるのが上手く、総合力が高い選手ですし、本人が一番分かっていると思います。試合前日のきょうも練習グリーンに居残ってパター練習を繰り返していました。勝利に向けての準備ができていると思いますし、闘争心も感じます」

これまでの優勝争いも確実に血や肉となっているという。「積み重ねているものは大きいと思います。勝負どころでの自分のメンタルコントロール、マネジメントなど確実に今後に生きてくると思います。西郷さんもそうでしたが、1つ勝てば一気に何勝もできるもの。この壁をここで乗り越えてほしいですね」と期待を込めた。

■好調ダンロップ勢2人はやはり優勝候補

新ドライバーツアー配布後、3連勝中と絶好調のダンロップ勢。今週も当然優勝候補に挙がる。前週「日本女子オープン」で連覇を果たした勝みなみは「やはりキャリーで飛距離が出るのが魅力的ですし、パッティングも強気でいける選手。体力も十分で、たとえ疲れがあっても戦える。2週連続優勝の可能性も高いです」とやはり上位にきそう。

一方、2週前の「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」初日にツアー記録となる「60」を叩きだして優勝した山下美夢有は、技術以上にその姿勢を評価。「いま、メルセデスランキング、賞金ランキングで1位に立っている山下さんの背中をみんなが追っているわけですが、山下さんは振り返ることなく上だけを見ている。だから、スコアも順位も突き抜けられる」とまだまだ勢いは止まりそうにない。

解説・大西翔太(おおにし・しょうた)/1992年6月20日生まれ。名門・水城高校ゴルフ部出身。2015年より青木瀬令奈のキャディ兼コーチを務める。16年にはキャディを務める傍らPGAティーチングプロ会員の資格を取得した。ゴルフをメジャースポーツにと日夜情熱を燃やしている。21年には澁澤莉絵留ともコーチ契約を結んだ。プロゴルファーの大西葵は実の妹。YouTube『大西翔太GOLF TV』も好評で、著書『軽く振ってきれいに飛ばす!! 飛距離アップの正解』が発売中。

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