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食事は?言葉は? 渋野日向子が笑顔で明かす“海外生活” 「自由に楽しんでます(笑)」

晴れ渡った青空が広がる南国ハワイのゴルフコースに、明るい笑い声がひびく。それはオアフ島西部のリゾート地・ホアカレイカントリークラブで行われた米国女子ツアー「ロッテ選手権」に出場した渋野日向子と、現地生活を支えるチームスタッフの声。浮かぶ笑顔、ノビノビとした姿は、日本にいるときとなんら変わりはない。

「ストレス? そうですねー…特には。自由に楽しんでます(笑)」

海外生活について聞かれた渋野も、明るい声でこう答える。コースでもリラックスした様子で冗談を言い合う姿を何度も見かけることができた。まだ2カ月程度とはいえ、慣れない土地で環境の変化に戸惑いを感じても不思議ではない。ましてや渋野は新天地で世界トップクラスが集まるツアーを戦うアスリートである。しかしその印象は“なんだか楽しそう”。いったい、どんな生活をして、その雰囲気を保っているのか?

■テーブルに並ぶのは日本の家庭料理

米国で渋野を支える主なメンバーは、田谷美香子マネージャー、藤倉法隆トレーナーに、試合によって替わるキャディを含めた3人。まだ米国内に拠点と呼べる場所はないため、試合が行われる会場近くに家を借りて過ごすのが転戦生活の基本となる。そしてその様子は、まさに“ファミリー”だ。

海外で一番ストレスがかかりそうな部分として、パッと浮かんでくるのが『食事』。だがチームで囲む食卓には、毎日、日本の家庭料理が並び、とても米国での光景とは思えない。ロッテ選手権の週は、豚の生姜焼き、おでん、カレーなどが渋野の快進撃を支えた。田谷さんが毎日腕をふるい、ここまではハンバーガー、ピザなど、いわゆる「アメリカっぽい」ものを渋野が口にしたことはないという。

「私は大変なこと何にもしていないからなー(笑)。ご飯も作らんし。これからご飯くらいは作ろうかな。帰ってきたらボーーッと座っているだけ。手伝わないと(笑)」。家に居る時の様子を、渋野は笑いながらこう話していた。ただ田谷さんからは、お手伝いを申し出て、時に一緒にキッチンに立つ渋野の話も聞くことができた。

米国でも、もちろん地域差はあれど、日本の食材を手に入れることは可能。そのため“胃袋の問題”は決して大きいものではない。渋野に付いて一緒にコースを歩く田谷さんの頭のなかで、今晩の献立が組み立てられていく。さらにトレーナーも帯同しているため、コンディションを整えるための環境は充実している。

■英語も徐々に上達?

一番の不安は「英語」だと本人は明かすが、ここもマネージャーや、コース内ではキャディの通訳によって、コミュニケーションで困ったこともないようだ。さらに最近ではこんな変化も。

「英語もだんだんとですけど、いろんな単語を聞き取れるようになってきています」

これには「まー、意味は分からんけど(笑)」という“オチ”がつくのだが、だからといって、言葉の問題が精神的な負担になっているかというとそうでもないらしい。「私、全然(言葉の)ストレスがないんですよね。なんか大丈夫なのかな? ストレスと思ったほうがいいんですかね? だから勉強しないのか!(笑)」。ここでもあっけらかんと笑う。

他にも米国を転戦するうえで大変なのが『移動』というのは、よく聞く話。例えばハワイから今週の「DIOインプラントLAオープン」が行われるカリフォルニア州に戻るのも、機内だけで6時間は過ごすことになる。日本に比べて距離が長く、国内で時差があるのも負担になるが、「寝てるだけ(笑)」と今のところ大きな障壁にはなっていないようだ。

また移動に関しては、時間的な問題以外にもこれまでとは異なる点が生じてくる。日本では、道具などを試合会場から次の土地へ宅急便で送ることができるが、米国ではロストバゲージ(荷物の紛失)や到着遅れを考慮し、選手らが自ら荷物を持ち移動するのが一般的。これまでとは比べものにならない量の荷物を持って、次なる戦いの地に向かうことになる。

渋野たちも、キャディバッグや米などの食料が詰まったキャリーケース、さらに炊飯器などの調理器具を肩に飛行機に飛び乗る。田谷さんも、ここは「日本よりも“戦ってる”という感覚が強いですね」とその違いを話す部分だ。

■渋野が得意な家事は…

せわしなく毎日が過ぎていくなかで、家が常に憩いの場所になっていることは渋野の心に余裕をもたらす大きな要因になっている。建物自体は毎週かわっても、リビングに集まって話をしたり、動画を見たりする時間の過ごし方は変わらない。個室にこもるのは寝る時くらいなもので、基本的にはリビングでワイワイ盛り上がりながら夜が更けていく。

渋野が最高の状態で試合に臨めるよう、周囲のサポートは手厚い。そしてそれが「自由に楽しむ」感覚を生んでいく。ただ、ひと際大きな笑い声を挙げながら、生活面で渋野が胸を張ることがある。「洗濯は得意だから(笑)。洗濯機でちゃんとやっているんで!」。何度も言うが、その明るさは場所は違えど変わらない。

海外メジャーの「シェブロン選手権」は4位タイ、そしてロッテ選手権の単独2位と好成績が続き、米国ツアー本格参戦後初優勝も間もなく訪れそうな予感が漂う。その背景には、こんな充実した“海外ライフ”がある。今週、カリフォルニアの会場でも、明るい笑い声がひびくに違いない。(文・間宮輝憲)

<ゴルフ情報ALBA.Net>