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「1日もムダにできない」 渋野日向子の“波瀾万丈”予選会前半戦は思わぬミスからリベンジへ

<Qシリーズ(前半) 4日目◇5日◇マグノリアグローブ(米アラバマ州)◇クロッシングズC(6664ヤード・パー72)、フォールズC(6643ヤード・パー71)>

前半、後半ともに4ラウンドを消化する来季の米国女子ツアー出場権をかけた「Qシリーズ」の前半戦が終わった。110人が出場するなか、前半戦を終えて70位タイまでが後半戦に進出する。24位タイで運命の4日間に向かう渋野日向子の前半戦を振り返る。

予選会前半戦直前のドライバースイング【動画】

■まさかの下位スタート… 

「1日悪くても、まだある」。8ラウンドにわたる長丁場の戦いでは、たとえ1日叩いても、挽回は可能だと見ていた。渋野はそんな言葉を予選会前に話した。ところが初日に2オーバーの・81位タイと出遅れたとき、この考えが吹き飛ぶほどのプレッシャーに襲われていた。

ここまで準備してきたものを出し切れば、前半戦突破はそう難しいことではなかった。それがふたを開ければ、初日から大きく出遅れることになる。前半から思わぬ“飛びすぎ”を起こしダブルボギーを叩くなど、2バーディできていた序盤の流れを崩してしまった。

「初日からずっこけたので、考えてもいなかったプレッシャーを感じた」。1年間、この予選会のために準備をしてきた。年間を通じて2022年から米ツアーへという青写真を描いてきたからだ。それだけに、出だしのつまずきは渋野に重くのしかかった。

初日のラウンド終了後は報道陣の取材を受け、「きょうは打ち込みます」と、足早にドライビングレンジへと向かった。じっくり1時間半ほどの打ち込み。気になっていたのは、アドレスの向きだった。

「左を向きすぎてしまう」と明かした。大幅なスイング改造を施して臨んだ21年シーズン。1年間やり通してきたことに自信をつけ乗り込んだはずも、大一番で狂いが生じた。違和感を覚えながらのラウンドを終えて、すぐに修正にとりかかった。これまで渋野のプレーを見てきたマネージャーが、一球一球後方から向きを確認する。すると納得の表情を浮かべ、帰りがけには「分かった」とつぶやきながら帰路についた。

■2日目に挽回も…最終2ホールの落ち込み

2日目はそんな矯正効果がさっそく現れる。16ホールを終えてスコアを3つ伸ばしていた。ライン読み、スピードともに難解なグリーン上でやや苦戦を強いられながらも、バーディチャンスを量産した。ところが上がり2ホールでまさかのダブルボギー、ボギー。一気に貯金を使い果たし、振り出しに戻った。

「一つのミスで最後に落としたのは悔しいけど、昨日よりは改善できている」。前向きなコメントを残したが、内心は違っていたと振り返る。「“ずーん”みたいな(笑)。初日どーんってきたら、ずーんって。1日でも落としてしまうとぜんぜん違う。あらためて1日も無駄にできないと思った」

2日目を終えて順位こそ上がったが72位タイ。「予選カットが見えていた。予想では毎日アンダーを出してと意気込んでいた。(プレッシャーは)めっちゃありました」。窮地に追い込まれながら迎えた“ムービングデー”の3日目。「あとは上に行くだけ」と渋野は反撃に出た。

■“ムービングデー”でベストスコア、そして最終Rへ

1番でボギーを叩き「スタートでこけてしまった」と暗雲が立ちこめたが、3番のバーディで戻すと、8番からの11ホールで圧巻の6バーディ。この日のベストスコアタイをマークした。「リベンジをしたかった」とスイッチが入り、順位も一気に上がり25位タイ。「自分の打ち出したい方向に打ち出せる回数が増えてきた」と、不安部分を消して攻勢に転じた。

「ドキドキに勝てたと思います」とジャンプアップした自分を褒めた。当初の見込みが狂い、それこそ1日のミスも許されない状況に追い込まれ、予選敗退という危機に直面しながらも踏ん張った。「振っても曲がる感触がなかった」とティショットの飛距離、方向性ともにグングン上昇。加えてミドルレンジのパッティング決まり、「長いのが入るとノッて行きやすい」と渋野らしさがようやく出た1日だった。

4日目も攻めの姿勢を崩さず、出だしからピンにつけるバーディを奪う。そして4番でもバーディパットを沈めたが、続くパー5でピンチが訪れる。ティショットは右のラフにつかまったが、ボールが浮くライで、グリーン手前には池が口をひらく状況。するとフロントエッジまで206ヤードのセカンドは池を越えることなく、さらにドロップした4打目も寄らず。追い打ちをかけるかのように3パットのダブルボギーを叩き、流れを切ってしまった。

「狙っていく必要はなかった。Qスクールでやることではない。そらそうだよな(笑)」。終了後は反省の弁ももれる。攻めと守りの切り替えができなかったことを悔やんだ。終わってみればこの日も5バーディを奪って上位進出が見える位置で終えたが、前半4日間ではプレッシャーとの戦いを経験し、攻守の切り替えポイントを学んだ。8日間の戦いは未経験。試行錯誤の予選4日間で得たものは大きかった。

首位はトータル19アンダーで二桁アンダーが10人というなか、渋野はトータル6アンダー。4日間を残すとはいえ、順位を上げるにはもう一踏ん張り、二踏ん張りが必要だ。“たら・れば”にはなるが、4日間で叩いたダブルボギーは3つ。3ホールで6オーバーのミスを減らすことはすなわち、上位進出につながる。「(出場権を多く確保できる)20位以内に入らないといけないので、一つでも上に」。

来季、少しでも出場機会を増やすためにも、ムダなくスキのないゴルフを貫く構えだ。1年間の思いをぶつける最後の4日間。現地時間9日から始まる後半戦で運命が決する。(文・高桑均)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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