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「ゴルフはご飯を食べるのと一緒」 父から見た娘・稲見萌寧は「ゴルフだけすごい。部屋は汚いけど」

<JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ 最終日◇28日◇宮崎カントリークラブ(宮崎県)◇6543ヤード・パー72>

2020年と2021年が統合されたロングシーズンの賞金女王争いはしれつを極めた。最終戦最終日のバックナインまで、稲見萌寧が逃げ切るか、古江彩佳が逆転するのか、状況がめまぐるしく変わった。最終的には稲見が逃げ切り。そんなハラハラする状況を間近で見ていた稲見の父、了さんに話を聞いた。

賞金女王が決まった瞬間は「うれしかった」と笑みがこぼれた了さんだったが、最初にどんな言葉を娘にかけたいかと聞くと、「早く帰るぞって言いたい(笑)。地鶏の炭火焼きのお店を予約しているので」と本気でいう。

余談だが、地鶏が有名な宮崎に入ってから、「もう3回地鶏を食べて後悔した」と了さん。理由はライバルの古江が初日に大会レコードの「64」をマークして首位発進したあと、「チキン(弱虫)だから大会中は鳥を食べない」と発言。「そこからは行ってない」と了さんは話す。また以前、持ち歩いているマットレスに合わせる“鳥柄”のシーツを買ったところ、「西郷(真央)さんにトリ打つよと言われて、本当に次の日にトリプルボギーを打ったので、それ以来使っていない」という。

娘が賞金女王を獲得しても「本当に特に何もない。優勝したときも『おめでとう』も『お疲れ様』もない。また普通に練習するだけ」とドライな答え。「これだけやってりゃ、勝てないほうがビックリする」と淡々というのだ。

きょう29日まで稲見は宮崎県に残り、テレビ収録に臨む。「もし収録がなければ、普通に帰って朝から練習していました。こういうときって遅くまで寝ちゃうけど、8時間以上寝るとむくむので8時間以上は寝かせないです。8時半には起こして『行くぞー』って練習する」。了さんがそういうように、東京五輪で銀メダルを獲得した翌日も、練習の拠点としている千葉県の北谷津ゴルフガーデンで、いつもと同じように球を打つ稲見の姿があった。

3年前から稲見のコーチを務め、今大会でキャディを務めた奥嶋誠昭氏も最終日のラウンド後に「あしたも練習行くぞと(萌寧から)言われて、お断りしました」と笑うほど、長いシーズンがようやく終わっても稲見のルーティンは変わらない。「本当にゴルフが生活の一部でご飯を食べるのと一緒。あとはご飯を食べて寝るだけの生活。そこに単純に試合があるだけ」と了さん。

では、ストイックにゴルフに向き合う娘を父はどう思っているのか。「だらしないですね」と一蹴したあと、「本当にゴルフだけはすごいです。部屋は汚いですけど(笑)。もっとちゃんとやってほしいです」。やはり手放しでは褒めない。

稲見親子が目指すのは、賞金女王でも海外メジャーでもなく「誰も敵わない」と思わせる全盛期の不動裕理やイ・ボミ(韓国)だという。「昔から言っているのは、イ・ボミさんが強かったときのあのポジションにいたい。海外とかには絶対に行かない。国内で強い。それで30勝の永久シードのほうがいい」(了さん)

不動裕理はツアー通算50勝の永久シード選手で、2000年から6年連続で賞金女王を獲得。また、ボミは15、16年に連続で賞金女王に輝き、15年には7勝を挙げて2億3049万7057円を稼ぎ、他を寄せ付けない強さを誇った。

娘も海外メジャーなどへのスポット参戦の可能性を匂わせたが、「アメリカのフル参戦の予定はまったくないです」ときっぱり。「一番の目標は永久シード」と親子の考えに変わりはない。

「それには何が足りないかをいつも考えている。トレーニングとかも僕のほうで探してくる。キックボクシングのジムが家の近くにあって。あれがなかったら、いまは絶対ない」。今年から取り入れたキックボクシングのトレーニングは、了さんの提案で始まったものだ。

現在22歳の稲見のツアー通算勝利数は『10』。まだ6人しか達成していないツアー通算30勝の永久シードへ、稲見親子の戦いはこれからも続いていく。

<ゴルフ情報ALBA.Net>