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金谷拓実の冷静な判断力と勝負強さ 「17番は前のホールと違う風が吹いていた」

<東建ホームメイトカップ 最終日◇18日◇東建多度CC・名古屋(三重県)◇7081ヤード・パー71>

「東建ホームメイトカップ」最終日は、シーズン2勝目がかかる22歳の金谷拓実、初優勝を狙う29歳の木下稜介、そしてアマチュア優勝を目指す20歳の中島啓太(日体大3年)との最終組となった。最大瞬間風速13.2m/sの強風が吹き荒れる難しいコンディションのなか、三つ巴の戦いで光ったのは、金谷の冷静な判断力と勝負強さだった。

金谷は前半の9ホールを1バーディ・ボギーなしでプレーし、折り返した時点でトータル11アンダーまでスコアを伸ばしていた。2位の木下と中島に3打差。独走態勢に入るかというところで試練が訪れる。「そんなに簡単には勝てるほど甘くないと思っていた」と10番ではグリーン右からのアプローチを寄せきれずにボギー。11番では80センチのパーパットを外して連続ボギーとしてしまう。中島との差は一気に1打差になった。

「ここからいつも通り自分らしいプレーを続けていこうと思った」と金谷は12番パー5へ。木下は2オンしたものの3パットでバーディならず。中島は40ヤードのバンカーショットを1メートルに寄せてバーディ。金谷はおよそ35ヤードのアプローチを3メートルショートしたが、これを入れてバーディを奪い、ガッツポーズが飛び出した。

流れが中島に傾きそうなところで勝負強さを見せ、「中盤は良いパットを決められた」と振り返る。3メートルショートしたアプローチについては、「ああいうのをもっとストレスなく寄せていかないと」と反省の言葉も。

そこから16番までは金谷も中島もパーを並べ、木下が15番で1.5メートルにつけるショットで1つ取り戻す。17番パー5のティイングエリアに立った時点では、金谷がトータル10アンダー、中島がトータル9アンダー、木下がトータル8アンダーとなっていた。17番はイーグルも期待できるホール。その3人のティショットが勝負の分かれ目となった。

木下のドライバーショットは右の池の方向へ。続く中島のドライバーショットも右へ流されていった。3人目に打つ金谷は2人のショットを冷静に見ていた。「前のホールとは違う風が吹いていて、2人とも良いショットを打ったと思うけど、風が思った方向と違っていて池に入ったと思った。自分はそれを見ていいショットを打てた」。16番までの風ならフォローだが、17番では左からの風が入って右へ流れると判断。金谷だけがドライバーでフェアウェイど真ん中を打ち抜いた。

結局、金谷は2打目でグリーンサイドまで運び、アプローチを1.5メートルに寄せてバーディ。池の手前にドロップして打った中島は、何とかパーで優勝に希望をつなぐも金谷とは2打差に。一方の木下は、2.5メートルのパーパットを外して完全に優勝争いから脱落した。もし金谷が最初にティショットを打っていたら、「自分も池に入っていたかも」という。

優勝会見で語った「みんな優勝したいと思うので、そのなかで強い気持ちを持って、冷静な判断もしなきゃいけない。どれだけスマートにプレーできるか意識していた」という言葉が、17番のティショットに凝縮されていた。

最終18番ホールは金谷がボギーで中島がバーディならプレーオフという状況。ともにパーオンし、先に中島にバーディパットを決められたが、ここでも「中島選手は打つ前から入るだろうなと思っていたので、自分がちゃんと2パットで終われるように考えていました」と冷静に2パットで沈め、優勝を決めた。

これで優勝賞金1950万円を加えて、今季の獲得賞金は5589万5000円となり、賞金ランキングトップに躍り出た。「賞金王にもなりたいですが、世界ランキングトップ50に入ればいろんな試合に出られる。それも目指しています」と金谷の目はすでに世界にも向いている。「全米プロは世界ランキング100位に入れば出られるはずなので、そこに向けて頑張ろうと思います」。次は5月のメジャー出場を狙う。(文・下村耕平)

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