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「ママでも勝てると伝えられたことがうれしい」 プロ22年目・佐藤靖子が愛娘に捧げる初優勝

<ラシンク・ニンジニア/RKBレディース 最終日◇24日◇福岡カンツリー倶楽部 和白コース(福岡県)◇6309ヤード・パー72>

2021年のステップ・アップ・ツアー初戦をプレーオフのすえ制したのは、42歳の“ママさんゴルファー”佐藤靖子だった。プロ転向から22年目の初優勝。表彰式では言葉をつまらせながら優勝スピーチを行い、トロフィーを手にした時には思わず「これが22年の重みですね」とつぶやいた。

トータル4アンダーで並んだ森岡紋加と、 18番パー5を舞台に行ったプレーオフ1ホール目。7メートルのバーディパットを決めると、右拳を高く挙げ、喜びを表現した。すでにこの時、森岡はボギー以上が確定している状況。2パットで決めれば優勝だったが、「左フックの速いラインで、何が起こるか分からない。気を引き締めました」と放ったパットが、本人も「キレイに入りましたね」と振り返るほどの軌道でカップに吸い込まれた。

正規の18番で6メートルのバーディパットをねじ込み、土壇場で1打上にいた森岡に追いついた。そして一騎打ちの場面でも、再びロングパットが決まる。終盤、あまりにもドラマティックな“逆転劇”を演じた。

1999年にプロ転向。シード選手としても活躍したが、これまで勝利には手が届かなかった。自身のキャディも務め、08年に結婚した夫の行夫さんとは、『1個くらい優勝トロフィーを飾りたいよね』という話もしてきた。「そういわれて自分も欲しいなと思ってました」。ようやく夫婦の願いが叶う日が訪れた。

13年10月には、長女のななみちゃんを出産。そこからプロゴルファーと母親の両立を続けてきた。自分がゴルフをしている姿をマネする娘の姿に癒され、「ママを一番応援しているよ」などの言葉は力になった。「『ななみのおかげで優勝できたよー』って伝えたい。早く抱きしめたいですね」。愛娘の存在、そして「夢を諦めずにできる環境を作ってくれる」家族のサポートに感謝し続け、ここまでツアープロとして戦ってきた。

だが昨年、新型コロナウイルスによって試合に出られない日々を過ごすなかで、“ツアープロを辞める”という考えも頭に浮かんだという。「試合がないなかで、どう生活すればいいんだろうと思った。レッスンやプロアマの企画など、他の仕事も考えていたところでの優勝でした」。そんな迷いを抱いていたなかでの優勝だった。

だが、こんな目標もある。「ママでも優勝できることを伝えられたことがうれしい。米国では当たり前のこと。子供を産んでもプレーできる環境作りができれば」。この思いを実現するため、今後もプレーを続ける。

「今、黄金世代と言われている子たちが生まれた頃(98〜99年)に、私はプロになっていました。何歳でもできるスポーツということを知ってもらいたいですね」。そう言って、いつも柔和な表情をさらに崩した。自分のためだけではなく、家族、そして女子ゴルフ界にとっても、この1勝の価値は大きい。(文・間宮輝憲)

<ゴルフ情報ALBA.Net>