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ジョン・ラームは小さいトップからクラブを引っ張り続けて最長415ヤード飛ばす【超一流のスイング術】

ジョン・ラームはスペイン生まれの25歳。アメリカのアリゾナ州立大学に進学し、世界アマチュアゴルフランキングで1位になった。2016年にプロ転向後、米ツアーでは3勝を挙げている。身長188センチ、体重100キロと大きな体格を生かし、ドライビングディスタンスは310ヤード前後をキープ。今季の最長飛距離は3位となる415ヤードをマークしている。現在凍結中の世界ランキングは2位。そんなラームのスイングを、最先端の理論に精通しているプロコーチの井上透氏が解説する。

ラームのスイングはものすごくコンパクトです。これだけトップがコンパクトなのに、あれだけ爆発的な飛距離を生み出せているのは、小さな動作で大きなエネルギーを得ていることと、彼の体格が大きいことの両方あります。

バックスイングでは右方向に重心移動し、左腕が地面と平行になった位置で、下半身がすでに切り返し動作に入っています。だからトップはすごくコンパクト。切り返しでは、見た目以上に左に強く踏み込んで、腕を引っ張り下ろしている。最後は脚を伸ばしながら、左足から体の重心までの距離を長く取ってフルリリース。トップが大きすぎると緩みが生じて、切り返しでクラブにかかる力が弱くなりますが、ラームはトップで緩みがなく、ダウンスイングでクラブに力をかけ続けているから飛ぶのです。

トップのレイドオフ(後方から見たときに、シャフトが飛球線と平行のラインよりも左へ向く)も特徴的です。このポジションからクラブに力をかけられるのはすごいですけど、普通はできない。そもそも左手首を手のヒラ側に折るヒンジングでレイドオフになりますが、私は推奨しません。ゴルフを小さい頃からやっていて、ヒンジングを何のストレスもなくできるのであればいいんですけど、ある程度年齢がいって、スクエアグリップやウィークグリップでヒンジングをするのは怪我のリスクが高いので危険です。

フォロースルーを見ると彼は左足カカトを軸にして回っていることが分かります。切り返しで左足を踏み込んだときに、ツマ先からすでにカカトに加重がかかっている。これがツマ先に加重が残っていると、ジャスティン・トーマスのようにツマ先軸回旋になります。どちらが良いとかではなく、ウェートのかけ方によって、ツマ先軸回旋かカカト軸回旋か変わってくるのです。一般的に、左ツマ先を開いて構えて切り返しで腰を回す動作がメインになると、カカト軸回旋になりやすい。腰の回転が少ないと垂直方向の力が強くなって、ツマ先重心になりやすいというのはあります。

ラームが年を取っておじさんになったら、きっとリー・トレビノみたいなスイングになると思います。切り返しが早くてトップがコンパクトなことが共通点です。緩みがなくエネルギー効率がいいのも一緒。体の大きさは全然違いますけどね(トレビノは170センチでラームは188センチ)。

■解説・井上透

1973年生まれ。神奈川県出身。1997年からツアープロコーチとしてのキャリアをスタート。中嶋常幸、佐藤信人、米山剛などのコーチを務めた。現在は成田美寿々や穴井詩らを指導している。東京大学ゴルフ部監督としての顔も持つ。

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