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好不調の波を乗り越えて… 河本結に見たシーズンを戦い抜くための試行錯誤【現場記者の“こぼれ話”】

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、国内だけでなく世界各国で中止が余儀なくされているゴルフトーナメント。なかなか試合の臨場感を伝えることができない状況が続いています。そんな状況ではありますが、少しでもツアーへの思いを馳せてもらおうと、ツアー取材担当記者が見た選手の意外な素顔や強さの秘訣、思い出の取材などを紹介。今回は、初のレギュラーツアーを戦う“ルーキー”から感じた変化について。

昨年の「リゾートトラスト レディス」は、プレーオフまでもつれる激戦を制した原英莉花プロがツアー初優勝をつかみとる大会になりました。20歳が流した歓喜の涙で締めくくられたラストシーン。しかしその裏で、もう1人、黄金世代が涙に暮れることになりました。それが3位タイで大会を終えた河本結プロでした。首位と1打差の2位からスタートした最終日、河本プロは一時トップに立ちながらも、後半伸ばすことができず、悔し涙を流す結果となりました。

その前週の「中京テレビ・ブリヂストンレディス」も単独2位フィニッシュ。2週連続の惜敗だけに、悔しさはひとしおだったと思います。さらにこの時の河本プロは、最終的に11ラウンドまで伸ばす『連続ストローク60台』の真っただ中。リゾートトラストから2週後の「宮里藍サントリーレディス」、さらに続く「ニチレイレディス」もともに3位タイと、これ以降も優勝争いを続けました。

しかし、そこから2カ月ほどが経過した頃。8月の「北海道 meijiカップ」の会場で河本プロに話を聞いた時、「先々週くらいからパッティングがおかしい」という“違和感”を口にしていました。グリーン上のイメージが悪いなか、北海道でのこの大会こそ12位と上位で終えましたが、その後の「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」、「CAT Ladies」と2週連続の予選落ち。CATの予選ラウンド終了後には「どうしたらいいか分からない」と、うつむきながらクラブハウスに戻る姿を目にしたほどでした。

『長いシーズン、いい時ばかりではない』。現役選手から一線を離れたレジェンドを問わず、ツアーを経験してきた人々からよく聞くこの言葉を実感させるような姿でした。そして、ここから少し経った頃あたりから、河本プロの“ある変化”を感じるようになっていきます。

私たちは会場で選手に話を聞きたいと思った時、極力負担をかけないよう、練習を終えた後に取材をすることがほとんど。練習グリーン脇で日がとっぷりと暮れるまで待っていることも、珍しいことではありません。例えば、練習の虫として知られる鈴木愛プロを待とうと思ったら、それなりの覚悟(『さて、きょうの原稿は何時に終わるのかな?』など)を決めます。そして、河本プロもその覚悟が必要となる一人といえます。

しかし、秋口に差し掛かるにつれ、どうもこの“待ち時間”が少し短くなっていく気がしていました。もちろん、日が暮れるのが早まる季節でもあるのですが、パッティング練習そのものの時間が以前よりも短くなっていることを感じたのです。気になって聞いてみると、「あまり長くやりすぎると、疲れもたまってしまうので」という理由で、練習方法を変更したことを明かした河本プロ。ある程度ルーティンを決め、それをクリアしたら切り上げるというスタイルに変えた、ということでした。

そこからさらに時は進み、今年1月の米フロリダ州。河本プロが米ツアー本格参戦のデビュー戦となる「ゲインブリッジLPGAアット・ボカ・リオ」を会場で取材する機会に恵まれたのですが、この時のラウンド後のパター練習は、さらに“ルーティン化”が進んでいるように見えました。カップの周りにティをさし、そこから連続で決める練習を数種類行い、それをクリアすれば、まだ陽が残っていてもグリーンを離れます。『かなり、カチッとしたルーティンになりましたね?』と聞くと、「やっと、これでいけると思えるもの(ルーティン)が見つかったんです」という言葉が、清々しい笑顔とともに返ってきました。

ツアー1年目の選手に話を聞くと、ほとんどの選手が、まずはこの生活に慣れたいということを口にします。河本プロも、昨年の良かった時期、そして苦しい時期の経験を、過ごし方をアップデートさせるための材料にしているようです。無事試合が始まったら、今のルーティンについてさらに深掘りして効果などを聞いてみようかなと思っています。でも、それはフロリダで見たものと大きく変わっているかもしれないし、また今年が終わる頃には全く別のメニューになっている可能性もあるかもしれません。

今年は米国での1年目。きっとここからも、その環境に合わせるため、もちろん練習以外の面でも様々なスタイルを模索していくのだと思います。すべては変わらない信念を貫くため。その繰り返しのなかで、いいシーズンを送れることを、改めて期待したいと思います。(文・間宮輝憲)

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