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青木功が毎日40分かけて深爪にする理由はピアニストと同じ!?【現場記者の“こぼれ話”】

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、国内だけでなく世界各国で中止が余儀なくされているゴルフトーナメント。なかなか試合の臨場感を伝えることができない状況が続いています。そんななか、少しでもツアーへの思いを馳せてもらおうと、ツアー取材担当記者が見た選手の意外な素顔や強さの秘訣、思い出の取材などを紹介。今回は「世界のアオキ」を取材したときの話です。

見るだけで痛いので閲覧注意! 青木功の指先のアップ【写真】

2014年の12月、私は焦っていました。男女ともにトーナメントが終了していましたが、ゴルフ雑誌ALBAは毎月2回必ず出さなくてはならなかったのです。隔週誌なので週刊誌と違って合併号はなく、取材機会が少なくなっても、作るページ数は同じ。空いている白紙のページの左上に「メモ用紙」と書いて発行できたらどんなに楽だろう、そう考えたことは1度や2度ではありません。

年末年始は印刷所も休みということもあり、前倒しで校了を終えなくてはならないので、いつもに増してスケジュールはタイトでした。そんなとき、編集部の雑談で「青木功プロの爪がすごいことになっているらしい」という話を聞き、締め切りまでになんとかその爪を撮影できないかと考えました。

ちょうど12月19日(金)に都内で「青木功 プロ生活50周年を祝う会」が行われるので、そこで何とか接触して爪を接写したい。私は別の取材で行けず同僚にそのミッションを託しましたが、結果は失敗…。やはり安倍晋三首相やジャンボ尾崎、長島茂雄巨人軍終身名誉監督が駆けつけるような大規模な祝賀会で、アポなしの単独撮影は難しかった…。ネットや新聞、週刊誌と同じ写真では、編集長のダメ出しを食らうことは目に見えています。

ここまで来たらダメ元で取材を申し込むしかない。普段なら、1カ月程度は余裕を持ってお願いするものですが、なんせ12月19日の金曜日が空振りに終わり締め切りはもう目前。「今日や明日に5分でもください」という感じの失礼な依頼をしたはずです。すると、「都内でトレーニングをするときに10分くらいなら」と、時間をいただくことができました。

そのときに撮影した写真がこれ。そう、「世界のアオキ」はすごく深爪なんです。全盛期は「アオキマジック」と賞賛されるほど、ショートゲームが天才的でした。そんな青木プロのこだわりは、小さめのグローブを引っ張るように着けて、皮膚に同化させるくらい密着させること。そのため、爪でグローブがダブつく感じを極端に嫌ったのです。理由を聞くと、「指先の感覚を変えないためだよ」と教えてくれました。さらに「40分かけて爪を手入れするのが俺の日課なんだ」とも。

そのとき、爪を切るところも実演していただきました。もう切る前から、「いったいどこを切るの?」というくらい深爪な状態。あっ! 本当に切っちゃいました。「青木プロ、血が出てますけど大丈夫ですか?」。本人はまったく意に介す様子はありません。それどころか甘皮まで切っちゃっています。いま思い出しても拷問レベルです。

約束の取材時間は過ぎていましたが、指先の感覚を保つ日課も教えてくれました。「毎朝起きたら、壁をコツコツとピアノを弾くように叩いて五感を刺激するんだ。それから大きな筋肉のストレッチに移っていく」。確かにピアニストって深爪かも。でも青木プロ以外に深爪のプロゴルファーを私はあまり知りません。どちらかというと爪が長い人が多いような気もします。

石川遼プロの爪は長いですし(本人に聞いたことはありませんが)、片山晋呉プロは「2日に1回くらい爪を切ります。僕の爪は長めなんです。(爪の先の)白いところがないとイヤ」と言っているくらい。短くするにしても長くするにしても、感覚を保つ上では、爪の長さは一定のほうがいいような気がします。

最後の話は蛇足ですが、当時私も青木プロにならって、深爪にしてからゴルフに行ってみました。それでどうなったか? 急に短くしたせいなのか、ショートゲームのタッチもスコアも出ませんでした。それ以来、ゴルフの前日や前々日には絶対に爪は切らないようにしています。青木プロ、ごめんなさい。(文・下村耕平)

<ゴルフ情報ALBA.Net>