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アップライトなスイングで「60切り」を2回達成! 50歳ジム・フューリクのさらなる挑戦【PGAツアー公式コラム】

自宅から約30分のところに、ゴルフ殿堂博物館がある。彼は長いキャリアの中で、この博物館を2度訪れた。

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1度目は友人のフィル・ミケルソンが殿堂入りした2012年。2度目は4年後の「トラベラーズ選手権」で「58」という記録を打ち立て、当時着用していたハットなどを寄附するためだった。3度目も必ずやってくる。通算17勝を達成し、「60」を切るスコアを2度もたたきだした彼が、そこに名を連ねるのは確実だ。

「考えたことはある。メディアからよく聞かれるからね」と、ジム・フューリクは笑いながら答えた。そでもすぐに、真顔で続けた。「良いプレーを続けてかなえば栄誉なことだ」。これまでキャリアの中で思い返すのは、優勝よりもミスについてだった。

「若いころは立ち止まる時間はなかった。優勝したときでさえ興奮は一時的で、すぐに次の試合に向いていた。でも、年を取るにつれて勝利へのありがたみが増してきたかな」

5月12日には50歳を迎え、シニアの出場権を得たが……。

「どれだけ成功しても、それ以上のものが欲しくなる。皆、同じじゃないかな。ルーキーのときに17勝するとは想像もつかなかったし、27年後にプレーしているとも思わなかった。自分のキャリアをうれしく思うが、それでもまだやり残したことがある」

フューリクがレギュラーツアーで十分に通用するのは、結果が物語っている。新型コロナウィルスの影響でツアーが中断する前は3試合で予選落ちを喫したが、2020年シーズンに入った「セーフウェイオープン」で17位タイ、「RSMクラシック」で23位にそれぞれ入っている。もう少しさかのぼると、2019年3月の「プレーヤーズ選手権」がよみがえる。最終日に「67」をマークし、優勝したローリー・マキロイに1打差まで迫ったのだ。

「しばらく優勝できるような位置で戦えていなかったので、懐かしい感覚だった。自分のプレーを誇りに思えた」

2017年から肩の故障に悩まされてきたが、まだまだ最高のプレーができることを証明した。50歳になった今、フューリクが鮮明に思い返すのは、初優勝の1995年「シュライナーズ・ホスピタル・フォー・チルドレンオープン」だ。

「ノーザンテレコム・オープンでトップ10入りし、それから初優勝を迎えたんだ。ここでキャリアが積めるんだ、と感じたね。ゴルフはめまぐるしく調子が変わるから、常に一生懸命やってきたけど、趣味を仕事にするには注意も必要だよ。どういうことかって? 楽しむことを忘れてしまう。楽しんでいる人は、少年の心をもってプレーしていると思うよ」

50歳を目前にしても、心は14歳のころを忘れていない。コーチである父のマイクと作り上げた、アップライトのスイングで今も戦っている。

「スイング? 作り直そうと思ったことはない。変えていたら今のキャリアはなかっただろう。いつも父がそばにいて、何かあれば基本に立ち返ろうとした」

米ツアーの歴史の中で「60」切りは11回あったが、2度達成しているのはフューリクのみ。13年の「BMW選手権」2日目と、16年「トラベラーズ選手権」最終日だ。

特に、「トラベラーズ選手権」最終日は70位タイで迎えたのだから、まさかトップに迫るとは誰も考えてもいなかった。何しろ同組のミゲル・エンジェル・カルバロと、「休日はどう過ごすか」と話していたそうだから……。

カルバロが振り返る。「そばで見られたのは最高だった。ゴルフ史上最高のラウンドだったよ。大勢のファンが10番に駆けつけて、“メディアの居場所がないね”とからかったのも思い出す。バックナインのスタートも最高だった」

フロントナインの勢いは衰えることなく、偉業達成を長年の相棒キャディとともに喜んだフューリク。予選で同組だったザック・ジョンソンも、信じられないとばかりに証言した。

「初日に4オーバー、2日目は5アンダーで予選通過。そして最終日に58。あきらめない彼のゴルフは完璧だったね」

当時の思い出の品は、博物館に寄附したため手元には残っていない。それはフューリクにとって、「まだ勝つべき試合がある」という意味だ。

「ゴルフは長く休めないし、有能な選手が多く、あっという間に置いていかれるから自己満足もできない。それも楽しんできたからこそ、さらにうまくなるために練習しているんだ。ゴルファーは皆、欲張りだと思うよ」(文・Chris Cox)

<ゴルフ情報ALBA.Net>