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渋野日向子に似ている? “自分を持っている”吉田優利【注目ルーキー・開幕前の声】

今年ルーキーイヤーを迎える選手で、ひと際注目を集めそうな一人が、“プラチナ世代”の吉田優利だ。アマチュア時代に「日本女子アマ」、「日本ジュニア」の“2冠”を達成した逸材がいよいよ今季ルーキーとして国内女子ツアーにデビューする。さらに開幕前から多くのスポンサー契約を結ぶなど、ファン、関係者問わず期待値は相当に高い。

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吉田優利とはどんな選手か。本人に聞いてみた。すると、間髪入れずに「粘り強いゴルファーになりたい」と返ってきた。

「パーを拾う粘りはもちろん、相手が嫌だなと思っているところでバーディを獲れるような選手。そうやってくらいついていける勝負強いプロになれたらいいなと思います」

質問に対して一語一句ハキハキと、また理路整然と答えることができるのは自分を分かっているからに他ならない。ゴルフだけでなく、話していても頭の回転の早さが伝わってくる。青木瀬令奈のコーチ兼キャディで、吉田と同組でラウンドしたことがある大西翔太氏が「吉田さんは会話をしていても歯切れがいいし、非常に感覚が鋭い。渋野日向子さんと似ている部分があると思います」と評した。吉田のマネジメント会社関係者も同じ事務所の先輩・有村智恵に似ていると言った。いずれにしても“自分”を持っている選手といえそうだ。

持ち前の行動力、熱量、そして聡明さ。それはコーチを決めた高校二年生の時点から発揮されていた。その当時、師事したいと熱望していた辻村明志氏が教えていたのは上田桃子らプロのみ。アマチュアには遠い存在だった。それでも辻村氏に教わりたいと考えた吉田はある秘策に出た。「自分に必要なものは、自分で伝えないとダメだと思った」と自分の思いを詰め込んだ何枚にも渡る資料を持参して懇願した。そんな吉田の熱意に打たれた辻村氏は指導することを決意。『日本女子アマ戴冠』を目標にスタートして、みごと達成した。

「先生のおかげで日本アマも獲れたし、日本ジュニアも獲れたと思っています」と吉田はいう。では、どんなところがマッチしているのか。

「質問したことに対してハッキリとした答えを返してもらえるところがすごくありがたいです。私は聞いたことに対して、ストレートに返ってこないとすごく嫌なんです。遠慮がちに言われても、『だからどうなんですか』となってしまう。でも、辻村さん自身も選手だったから私の気持ちだったりとか、感覚だったりを分かってくださり、そういう話をしてくださる。先生と生徒の関係だけど、同じ選手目線で考えて教えてくださるのですごく尊敬しています。私はただ先生に教わるだけではなくて、自分の考えも述べながらコミュニケーションをとって、一緒に上手くなっていきたいタイプなので、すごく自分には合っているなと思います」

自分に足りないものを求めるのはゴルフだけではない。吉田はプロゴルファーであると同時に日本ウェルネススポーツ大学に通う女子大生でもある。ツアー転戦との両立は大変であることを承知で文武両道を決めたのは、「ゴルフだけが全てではないし、ゴルフが終わった後の人生を豊かにできるように、ツアーの合間に学校に行こうと思っています」という理由から。こういったところからも芯の強さが見てとれる。

そんな吉田でも昨年、心が折れそうな時があった。11月にプロテストを控えた春先から痛みが出た左手の「掌側板損傷(しょうそくばんそんしょう)」により、夏場約1カ月半に渡り離脱することになってしまった。ケガをした当初は「時間があることは、すごくうれしかったり、時間を使って出かけたりトレーニングしたりしよう」と楽観的に構えていた。だが、時が経つにつれて現実を知る。

「そんなに甘いものではありませんでした。ケガと向き合うにつれて、どんどんつらくなっていきました。外に出なくなった時期も、今日は何しよう…。暗くなったこともありました」。不安ばかり募る日々が続いた。

それでも「プロテストに受からないと何も始まらない。どうしたらプロテストに間に合うのか」と必死に気持ちを切り替えて折れそうなところで踏ん張った。この経験が吉田をさらに強くした。「ナショナルチームで3年半、人よりも経験しているという自信がいい結果につながった。ケガがあって苦しい1年でしたけど、我慢した甲斐があった」。さらに粘り強さを増したこともあって、12位タイでみごと合格。ファイナルQTでも20位としっかり前半戦出場権を獲得。プッシャーのかかるなか、準備不足を感じさせることなくプロとして順調な一歩目を踏み出した。

ルーキーとして挑むシーズン。まずはリランキングを突破して、シード獲得が目下の目標だ。「そのために一試合一試合に集中することも忘れずにしたい。リランキングを気にしながらになるかと思いますが、自分のプレーができるように集中してやれたらいいなと思います」といい意味で新人らしくないコメントも吉田らしい。

そして、「ゆくゆくはアメリカツアーで戦っていけたらいい」というのが描いている将来像。「そこまでにどれほど自分が成長できるかわからないですが、まずは高く目標をもって成長していければ、その扉は開くと思います」。世界を舞台にプラチナの輝きを放つ日を目指し、一段ずつ階段を上っていく。

<ゴルフ情報ALBA.Net>