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番手で選ぶな、五感で選べ! 宮田成華は7番アイアン2本で距離の階段を調整【女子プロから学ぶセッティングのスパイス】

アマチュアゴルファーは女子プロのスイングを参考にした方が良いと言われている。なぜなら女子プロの平均的なヘッドスピードは、一般的な男子アマの平均値と同じ40m/s程度だからだ。

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だが、本当に参考できるのはスイングだけだろうか。女子プロたちも我々アマチュアと同じように「球が上がらない」、「スピンがかかりすぎてしまう」といった多種多様の悩みを抱えていて、それを矯正しているのは、スイングだけでなく14本のクラブたちなのである。

そこで、女子プロたちがクラブセッティングにしている、ちょっとした工夫=スパイスをピックアップ。クラブ選びの参考にしてきたい。今回は宮田成華の7番アイアン。

165cmの長身とツアープロコーチも賛辞を送るスイングから繰り出される飛距離の出るショットが持ち味の宮田。なかでも球の高さはツアーでも有数で、日本では数少ない“上からグリーンに落とせる”選手である。

だが、球が高いがゆえの弱点があった。それはアゲンストの時にUTで打った球が風に負けてしまうこと。特にパー3でのティショット時に苦戦する傾向があった。「UTをもともと3本入れていたのですが、高い球を打とうとしたときに元々球が高いので上に吹けてしまうことがありました。特にティアップしたときに出やすかった。それがずっと課題でした」と宮田はいう。

そこで、それまで3本入れていたUTを一新してロングアイアンを投入。その際、5番から7番までテーラーメイドの『P790』、7番からPWまで『P760』と7番アイアンを重ねるセッティングにしたのである。どうして7番アイアンを重ねたのか。

「6番までは『P790』を入れることは決めていて、全体的な飛距離を考えたときに7番も入れようとなりました。同じ7番ですが『P790』のほうが一番手飛ぶ。『P790』の7番が170ヤードで、『P760』の7番が160ヤード。ちょうどよく5番から10ヤード刻みの距離の階段ができています。(『P790』は)すごく簡単に球があがりますし、やさしい。振っても左に行かない感じがしますね。安心感がある。見た目も違和感なく気にならずにできています」(宮田)

テーラーメイドと契約を結んでおり、使用できるクラブが限られるゆえの選択なのか。それとも過去にクラブ契約フリーの池田勇太が7番を2本入れたように戦術として十分ありなのか。プロコーチ&クラブフィッターの筒康博氏が、別モデルの同じ番手を入れる戦略について語る。

まずは同じ番手を2本入れることの是非の前に、そもそもアイアンとは各番手でどのように飛距離の差を作っているのかを説明する。

「基本的な要素は『ロフト角』です。クラブとしては『長さ』や『重さ』もありますが、米男子ツアーで活躍するブライソン・デシャンボー選手(米国)のように『同じ長さ&クラブ重量(シングルレングス)』でアイアン飛距離の階段を作るプレーヤーもいます。以前、彼が使用していたスペックをそのまま作って試打しましたが、ロフトだけでもちゃんと飛距離の差が出来ました。

一方で、それぞれの番手に求める『弾道』という点では『長さ』、『重さ』はもちろん各番手の重心位置など番手別にクラブスペックをフローした方が幅広いゴルファーが使いやすくなるとも感じました。現在、各メーカーのアイアンは『番手別設計』を採用しているのはこの辺りが大きな理由だと思います」(筒)

それを踏まえて、なぜ宮田のように『アイアンを2種類入れる選手』が出てくるのかを続ける。「設計自由度の高い現代アイアンでは、打出し角やスピン量など弾道の『質』を作る事ができます。ヘッドを変えることで、ロフト以上に弾道の中身を変えられるので宮田選手のように7番アイアンが2本のようなセッティングも生まれることもあります。ストロングロフト化した現代アイアンだからこそ起きたセッティングでしょう」。いわゆる“飛び系”アイアンをはじめとするアイアンの飛距離性能に特化した、“ロフトが立った”モデルが出てきたことで生まれた組み合わせだという。

とはいえ、基本的には「1つのモデルのアイアンセットの中でのロフト管理を行えば、そこまで神経質にはならなくても良いともいえます」と筒は言う。そのうえで「目安としては、各番手の飛距離差が15ヤード以上離れているならロフトチェックをしてみてください。もちろん、十分使っていて、しっかり自分の飛距離を把握している事が前提です。今回のケースはレアケースというか、かなり応用的なセッティングですから」と番手間で15ヤード以上離れたら一考の余地がありそうだ。

別モデルの同じ番手を2本入れる注意点として挙げたのは「トータル飛距離以外に、しっかりとキャリーやスピン量など『中身の違い』も打ち比べた上で投入してください」ということ。「ヘッドの大きさや安心感だけが理由なら、コースや調子によってどちらか1つのモデルに絞ったほうが迷わずに済みます」。あくまで全体的に見た上で判断しなければ、逆にマネジメントが難しくなってしまう。

そのうちの1つが構えたときの感覚。宮田も話していたが、かなり重要だ。「同じモデルでも7番くらいから上の番手のヘッドにシルエットが変わる場合もあります。逆にいえば構えた時に違和感がないなら、無理してメーカーを合わせる必要はありません」。大事なのはメーカーやモデルが似ているからではなく、自分の五感である。

筒がこの宮田のセッティングから学んで欲しいと話すのは、飛距離だけでなくスピン量や球筋を見た上でしっかりとした距離の階段を作ることが大事だということ。

それを踏まえたうえで、参考にしたいのがロングアイアンだけ別モデルにするという組み合わせ。「アイアンセットの中で難しく感じる番手をユーティリティに替える選択肢の他に『他のアイアンを使う』という選択肢という点では大いに参考にしていただいて良いと思います。現代アイアンは5番から上の番手が単品販売されているモデルが多いです。まず一度、自分のアイアンの『トータル飛距離』と『キャリー』から簡易的にデータ化してみてはいかがでしょうか?」。ローリー・マキロイ(北アイルランド、4番のみ『P750』、5番から9番まで『P730』)らPGAツアーメンバーに多いセッティング。選択肢の1つとしてみるのも十分にありだ。

解説・筒康博(つつ・やすひろ)/プロコーチ・フィッター・クラフトマンとして8万人以上のアドバイス経験を生かし、現在は最先端ギア研究所『PCMラボ』総合コーチ、インドアゴルフレンジKzヘッドティーチャーを務める。ALBA本誌ギア総研をはじめ様々なメディアでも活躍している。

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