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“渋野フィーバー“に振り回されず、長い目でみる必要性【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】

渋野日向子の全英女子オープン優勝で、女子ゴルフの注目度は一気に上がっている。帰国後、すぐに出場した「北海道meijiカップ」は、発熱などの体調不良と戦いながらも13位タイと大健闘。3日間計1万6407人のギャラリーを湧かせた。

今週の軽井沢でも、早くもテレビ局の取材を受けています【事前フォトギャラリー】

ゴルフ誌、スポーツ紙、テレビなどでも渋野の露出が急増。ゴルファーではなく、これまでゴルフに興味がなかった人からも色々尋ねられることも多くなった。

メジャータイトルの大きさはもちろんある。これに渋野ならではの魅力が加わっている。“スマイル・シンデレラ“のニックネームをつけられた渋野の笑顔。欧米で絶賛されたプレーの速さ。プレーにおいてもファンサービスにおいても高いプロ意識。自分をしっかりと持っていること…。そんな要素がからみあい、渋野に対する注目が続いている。

その一方で、ツアーとその周辺や、テレビ中継や報道のありかたの問題点も浮き上がってきている。

もっとも極端だったのはテレビ中継だ。渋野を追いかけることに重きを置くあまり「試合が全然見られない」「延々と渋野ばかり」という不満が噴出。石川遼、宮里藍など人気者が出るたびに、そちらばかりを追いかける傾向が強い日本のゴルフ中継だが、今回は特に目立った。最終日の優勝争いすら影が薄かったほどで「これがスポーツ中継と言えるのだろうか?」と首をかしげざるを得なかった。

「熱しやすく飽きやすい」のが、日本のメディアの特徴だ。一人、目立った活躍をすると、それだけにスポットライトを当て、他の選手どころか競技そのものを置き去りにしてしまいそうになる。これは、テレビ、新聞などの大手メディアが自分たちでスポーツイベントを主催したり中継したりすることで、報道と制作、さらに広告の垣根をグチャグチャにしてしまうから起きやすい。

自社主催のイベントだから大きく扱う、特別扱いする…。これでは報道とは言えない。しかも、良質な番組作りよりも視聴率至上主義が優先される。実際、今回のテレビ中継の視聴率はよかったようだが、それを免罪符にするのではなく、批判にも耳を傾けないと長くは続かない。新聞も同様で、渋野を中心にするのは仕方ないが、当たり前のことだが、本来の報道もきちんとすることを忘れないでいなくてはならない。

ツアーがするべきことはいくつもある。まず、渋野の良さ、渋野に対する海外の評価をしっかりと調査、分析すること。欧米同様、日本ツアーも頭を悩ませているスロープレーと対極にいる渋野が評価されている今こそ、スロープレーを減らす大きなチャンス。さらに、ファンに対する対応の仕方など、渋野が全英で人気を集めた理由をしっかりと分析し、そのありかたを選手たちに伝える必要がある。

もう一つ、大切なのが自分自身をしっかり持っている渋野を、周囲がつぶさないようにすることだ。プロになった瞬間からマネジメント事務所がついている女子プロが多い中、渋野は、契約先が窓口となっていた。だが、メジャー優勝者となれば、この先、狙っているマネジメント事務所がたくさんあるはず。スポンサーやCMなど様々な契約の話もどんどん出てくるだろう。プロアスリートが人気者になれば、それは自然な成り行きかも知れない。

だが、それによって練習時間や素顔でファンに接する時間が減ってしまい「選手を守る」という名目で選手の生の顔が見られなくなってしまうケースはいくらでもある。スポンサーを最優先し、ファンには表面だけいい顔をする…。そんな事務所の戦略にならされてしまった例も、残念ながら少なくない。これでは渋野の魅力は半減してしまう。

渋野の良さを生かしつつ、それを守る。アスリートにはいい時もあればそうでない時もある。一過性の人気に振り回されず、長い目で見ること。これこそが、周囲の“大人たち”に最も必要なことだ。(文・小川淳子)

<ゴルフ情報ALBA.Net>